Research Results 研究成果

高成形性に改質のニッケル基超耐熱合金、新工法で世界初の大量生産に目途

2017.08.29
研究成果MaterialsTechnology

 九州大学大学院工学研究院/カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I²CNER)の堀田善治(ほりた ぜんじ)主幹教授の研究グループは、長野市の長野鍛工株式会社(代表 中村千夏、以下「長野鍛工」)と共同で、航空機や自動車のエンジン部品などに使用されるニッケル基超耐熱合金(インコネル718)を高成形性に改質し、さらに大量生産できる新たな工法(遂送法(高圧スライド加工後に順次試料送りを行う工法))を開発しました。このインコネル718は高温で強度が高く耐食性に優れていますが、加工しにくく、実用サイズで高成形性を確保することは極めて難しい現状です。これまで両研究グループは、独自に開発した高圧スライド加工技術で成形性の向上が実現できることを示してきましたが、いかに大容量化するかは課題として残っていました。  
 しかし、遂送技術を新たに組み込み(参考図)、高圧スライド加工後に順次試料送りを行うことによって実用サイズにまで大きくできることに成功しました。
 九州大学と長野鍛工との共同開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の戦略的基盤技術高度化支援事業(平成28~30年度)のもとに進められているものです。この共同開発では、チタン合金(F1295)にも適用できることが確認されており、自動車、航空機、医療機器など幅広い市場で本研究開発成果の適用が期待できます。
 本成果は、平成29年8月29日(火)、京都での先端材料国際会議(IUMRS-ICAM http://www.iumrs-icam2017.org/)セッションB-5において公表されました。

図:高成形性ニッケル基超合金(インコネル718)の大量生産を可能にする遂送技術
(a)一次元的に改質領域を拡大(b)二次元的に改質領域を拡大

研究者からひとこと

 今回の共同開発によって、難加工性のニッケル基超耐熱合金の成形性を向上させ、さらに対象部品のサイズを実用レベルまで大きくすることが可能になりました。このような難加工性材料の改質化技術(巨大ひずみ加工法)に関する研究開発は毎年増え続けており、実用化に向けて盛んに研究開発が進められています。しかし、いまだ実現されていないのが現状です。今回、世界で初めての独自な発案となる遂送技術を導入しました。ここで強調したい点は、これまでの巨大ひずみ加工技術が実用レベルで利用できるようになることです。日本が抱える省エネルギー、低二酸化炭素排出に向けて貢献できる重要な共同研究開発成果と考えています。

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