Research Results 研究成果

IoT分子センサ:超長期動作が可能に ~携帯端末による健康状態や環境負荷物質の長期モニタリングに期待~

2017.11.09
研究成果MaterialsTechnology

 九州大学先導物質化学研究所の柳田剛教授、長島一樹助教、高橋綱己特任助教らの研究グループは、従来技術に基づくセンサよりも遙かに長期間に渡って安定的に動作する分子センサを開発しました。
 来るIoT(モノのインターネット)社会注1)では、ナノテクノロジーやIoT関連技術の発展に後押しされ、大規模データの収集・処理によって新たな価値を生む科学技術が見出されつつあります。現在スマートフォンなどモバイル機器で収集できるデータに加えて私たちの健康状態や周囲の環境に密接に関連する化学物質に関する情報が収集できれば、これまでとは全く異なる新たな価値につながることが予想できます。しかし、携帯機器に搭載できるような従来の分子センサは動作するにつれて性能が劣化してしまい、長期安定動作は本質的な課題でした。柳田教授らは、ナノサイズの分子センサから電気信号を取り出す部分に、従来の金属の代わりに分子センサ部分と同じ材料を用いることを提案し、酸化錫ナノワイヤによる長時間の安定したセンサ信号が得られることを実証しました。
 本分子センサ技術は、人の呼気や大気中に含まれる化学物質のモニタリングをスマートフォンなどで行い、ビッグデータとして活用することで、例えば病気の予防・早期発見などの健康管理や環境負荷物質の測定・抑制などの応用展開が期待されます。
 本研究成果は、論文受理に伴い、米国化学会誌「ACS Sensors」Web上に2017年10月23日(水)に掲載されました。また、2017年11月8日(水)にオンライン速報版に掲載されました。

(参考図)
(左図)本研究で作製したナノワイヤ分子センサと動作時の劣化の様子を表した概念図。
(右図)本研究と従来技術に基づく分子センサでのセンサ応答と動作時間の関係。

研究者からひとこと

 今回は数百~千時間程度の動作での安定性を実証しました。最終的には、センサを使用する人が一生涯買い換えずに済むように、100年程度の使用にも耐えられるように更に研究開発を進めていきたいと思います。

論文情報

Long-Term Stability of Oxide Nanowire Sensors via Heavily Doped Oxide Contact ,ACS Sensors,
10.1021/acssensors.7b00716

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