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研究成果

公開日:2019.10.15

バイオ医薬品の品質管理に向けた「冬虫夏草」由来の糖鎖切断酵素のメカニズム解明
~バイオ医薬品の性能向上や品質管理に役立つような研究開発に期待~

研究成果 農学

 ENGase(エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ)は糖タンパク質のAsn残基に結合したN-結合型糖鎖の根元に近い部分を切断して、糖鎖をタンパク質から切り離す(遊離する)酵素です。ENGaseは糖鎖を切り離すだけでなく、糖転移と呼ばれる反応により効率よく糖鎖をすげ替えることができるため、均一な糖鎖を持つ糖タンパク質を作ることが可能となります。ENGaseは、糖タンパク質である各種抗体(免疫グロブリンG; IgG)の性能向上にも役立つことから、近年注目が高まるバイオ医薬品の品質管理への応用が期待されています。
 ヒトなどの哺乳動物のN-結合型糖鎖では、根元のGlcNAcにフコースがα1,6-結合した「コアフコース」が付加しているものが多いことがわかっています。これまでENGaseには①コアフコースが存在する糖鎖には全く作用できないもの、②コアフコースの有無にかかわらず同程度の活性を示すもの、③コアフコースがある場合のみに高い活性を示す「コアフコースに特異性な」もの、があることが知られていました。しかし、それらの酵素の性質の違いがどのような構造的特徴にもとづくのかは、全く不明でした。九州大学大学院生物資源環境科学府博士課程3年の黄一博大学院学生、農学研究院の竹川薫教授らの研究グループは、冬虫夏草として知られるキノコの一種であるサナギタケ(Cordyceps militaris)からコアフコースに特異的な新奇ENGase(Endo-CoM)を発見しました。また、東京大学大学院農学生命科学研究科の関陽香大学院学生、伏信進矢教授らのグループは高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の高性能なシンクロトロン放射光実験施設を利用してEndo-CoMのX線結晶構造解析を行い、その立体構造を明らかにしました(下図)。これまで報告されていなかったコアフコース、GlcNAc、Asnが結合した状態の立体構造が得られたことから、ENGaseがコアフコースとタンパク質に近い部分をどのように認識しているのか、という長年の疑問にはっきりとした答えが得られました。今後は、コアフコースの認識を変化させたENGaseを作り出すなど、バイオ医薬品の性能向上や品質管理に役立つような研究開発が加速すると期待できます。
 本研究成果は「The Journal of Biological Chemistry」に2019年9月23日(月)(日本時間)に掲載されました。

(参考図)Endo-CoMの全体構造を左に、活性中心付近の拡大図を右に示す。本研究では、コアフコース(水色)と、GlcNAcおよびAsn残基(黄色)の結合した立体構造を決定して、それらを認識するEndo-CoMのアミノ酸残基(緑色)や周囲の様子などを明らかにした。コアフコースはそれをぴったりと囲むポケットにより認識されていた。

研究者からひとこと

冬虫夏草は昆虫の中に侵入するため進化の過程で独特のENGaseを手に入れたと考えており、微生物には無限の可能性があります。

研究に関するお問い合わせ先

竹川 薫 農学研究院 教授
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