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宇宙滞在中の若田宇宙飛行士とライブ交信

2009.03.26
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 平成21年3月26日(木),九州大学医学部百年講堂において,今月16日(月)にアメリカ合衆国フロリダ州のケネディ宇宙センターからスペースシャトル・ディスカバリー号で国際宇宙ステーション(ISS)に向けて飛び立ち,ISSで活動を開始した本学OBの宇宙飛行士若田光一氏(大学院工学研究科修了)と直接対話をするライブ交信「若田光一宇宙飛行士からエール -ライブ交信と宇宙授業-」を,本学,福岡県,(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA),(財)日本宇宙少年団の4機関で開催しました。

 まず主催者を代表して,麻生渡福岡県知事と本学の村上敬宜理事・副学長が挨拶し,続いて福岡県出身の漫画家で日本宇宙少年団の理事長でもある松本零士氏から寄せられたビデオメッセージが上映されました。
 続いて,「若田宇宙飛行士のミッション」について,JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部事業推進部の福田義也参事から映像を使用しながらシャトルの打ち上げからISSでの活動内容など今回のミッションの解説があり,次いで(財)日本宇宙少年団の的川泰宣
副本部長から,「宇宙への挑戦」と題した宇宙授業が行われました。

 9時過ぎにISSに滞在中の若田宇宙飛行士と中継がつながり,ライブ交信が始まりました。ISSの「きぼう」日本実験棟にいる若田宇宙飛行士の映像が会場のスクリーンに映し出されると,約450名の参加者から一斉に歓声が上がりました。
 質問者として選ばれた日本宇宙少年団福岡分団の清水魁偉(しみずかいい)君,舞松原アンビシャス広場の長友勇樹(ながともゆうき)君,九州大学工学部の石井紀子(いしいのりこ)さんの3人から質問が出されると,若田宇宙飛行士は丁寧に質問に答えていました。

 ライブ交信の最後には,若田宇宙飛行士から「会場に集まってくださった皆さんありがとうございました。将来皆さんの中から宇宙を舞台に頑張ってくれる人が出てきてくれればと思っています。夢,そして目標をはっきりともって皆さん頑張ってください。フライト後には福岡に行って皆さんに体験をお話しできればと思っています。」とメッセージが送られました。

【若田宇宙飛行士と各質問者との主なやり取り】
清水:宇宙は無重力ですが,重力のないところでの食事の満腹感は地球と一緒ですか?
若田:満腹感は地球にいるときよりちょっと少ない感じがします。食べ物は地球にいるときとほぼ同じものが食べられますが,生野菜などが食べられないのが残念です。「博多ラーメン」や「明太子」が宇宙で食べられたらいいなと思います。今回はラーメンは持ってきているので後で食べてみたいと思います。

長友:宇宙から地球を見て思ったことは何ですか?
若田:宇宙へと人類の活動領域を広げると同時に,素晴らしいかけがえのない地球の環境を守っていかなければいけないということを,美しい青い地球を見ながら感じます。

石井:今回3回目の宇宙滞在ですが,施設の設備や若田さん自身の居心地などだんだんと快適になっているのでしょうか?
若田:過去2回のフライトでは,スペースシャトルの中で過ごすことが多かったんです。1回目は,スペースシャトルで人工衛星を回収する作業がありましたので,狭い部屋で10日間ほど過ごしました。2回目は,宇宙ステーションに行って建設を行いました。今は,「きぼう」日本実験棟という広い空間となり,ミッションを重ねるごとに生活環境の場が広くなってきて,宇宙ステーションの中はとても快適です。

清水:これまで宇宙で実験した中で一番びっくりしたことは何ですか?
若田:今回アフリカツメガエルの腎臓の細胞を持ってきていて,細胞がどういう風に大きく成長していくのかといった実験を行っています。前のスペースシャトルで行われた実験では,蜘蛛が宇宙では上手に巣を作れないということが分かりました。

長友:若田さんが宇宙飛行士になるために頑張ったことは何ですか?
若田:宇宙飛行士といっても色々な専門を持った人がいます。自分の興味があるものが何かを見つけて,その分野では誰にも負けないと思えるくらい頑張ったと思います。自分の興味がどこにあるか,それをしっかり確かめて,その目標を持ったらそれに向かって努力してもらいたいと思います。宇宙に限らず色々な分野で道が開けてくると思います。

石井:これからの滞在で楽しいだろうなというものはありますか?
若田:前回,前々回の時は毎日が矢のように過ぎていったという感じでした。今日から宇宙ステーションでの長期滞在が始まったわけですが,日曜日には休日が取れます。地球を見ながら好きな本を読める時間が取れるだろうなと思って,それを楽しみにしています。

清水:宇宙にいるときに急病になったらどうなるんですか?
若田:今は,パイロットと技術者2人の3人で飛んでいます。お医者さんはいないんですが,救命救急の訓練は受けています。対応できれば処置をしますし,どうしても帰還しなければいけないとなったときには,ロシアのソユーズ宇宙船で地球に帰還することになっています。

長友:宇宙でしゃっくりやくしゃみをしたらどうなるのですか?
若田:これは面白い質問ですね。口でフーっと息を出すと,ロケットの原理の作用・反作用で空気を押すことによって体が動くのかなと思いますね。やってみましょう。ほとんど体は動かないですね。くしゃみをしたり,咳をしたりといった反作用で体が動くといったことはすごく少ないと思います。

石井:たくさんの勉強やイメージトレーニングを行ってきたと思いますが,それでも想定外や対応できなかった出来事がありますか?
若田:今回のフライトはこれまで順調に進んでいます。ハプニングや想定外ということではないですが,1回目のフライトでは太陽電池を切り離す必要が出たりとか,2回目のフライトの時には宇宙ステーションとのドッキングに必要なレーダーが故障するとか,やはり色々なトラブルが出るものです。そういうトラブルを想定して訓練をしていますので,予想も付かないようなトラブルに巻き込まれたということはないと思います。

【写真】
(上)九州大学から送られたオリジナルポロシャツを着て登場した若田宇宙飛行士(バックは県アンビシャスから送られた旗)
(中)質問に答える若田宇宙飛行士
(下)若田宇宙飛行士に質問する清水君(右)