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水素から電子を取り出す触媒を開発

2008.08.25
トピックス
 九州大学未来化学創造センターの小江誠司教授のグループは、水中・常温・常圧で水素から電子を取り出すニッケル系触媒(ニッケル-ルテニウム複合触媒)の開発に世界で初めて成功しました。
 そして、その触媒反応がこれまでの燃料電池(燃料極)や水素活性化酵素(ヒドロゲナーゼ)で考えられてきたものとはとは大きく異なる、誰もが想像しなかった4電子系メカニズム(注)で進行することを明らかにしました。

 本研究は、白金以外のニッケル-ルテニウム触媒を用い、水中・常温・常圧で水素から電子を取り出す新規な実用触媒開発の道を拓きました。なぜなら、実際の燃料電池で燃料として使用する水素は水分を含んでいるため、水存在下、常温・常圧で駆動するニッケル系触媒を開発した意味は大きいと言えます。さらに特筆すべきは、これまで誰も考えなかった4電子系メカニズムで水素から電子が触媒的に取り出されたことであり、本研究成果は、燃料電池及びヒドロゲナーゼの研究における大いなる一歩です。

 今後は、水中・常温・常圧で働く「空気極用の白金代替金属触媒」の開発にチャレンジします。最終的には、今回の結果と合わせ、水中・常温・常圧で機能する燃料電池用の白金代替金属触媒の開発を行っていきます。


 なお、研究成果は、日本化学会速報誌 Chemistry Letters オンライン版にて公開しています。

【プレスリリースはこちら】
 
※ 本研究は、九州大学グローバルCOEプログラム「未来分子システム科学」(拠点リーダー 君塚信夫)と文部科学省科学研究費補助金・特定領域研究460「均一・不均一系触媒化学の概念融合による協奏機能触媒の創成(協奏機能触媒)」(代表者 碇屋隆雄)の研究の一環として、九州大学の小江誠司教授のグループが九州大学伊都キャンパス及び福岡市産学連携交流センターで行ったものです。


(注)「4電子系のメカニズム」とは「触媒サイクルに4電子注入し、4電子取り出すメカニズム」のことで、反応式は下記2式で表されます。

反応式