About 九州大学について

Ⅳ国際的連携の強化

大学改革等への取り組み

改革の大綱案

IV.国際的連携の強化

国際連携についての課題

九州大学の改革においては、COE構想に基づく国際的水準を保つ教育研究環境を構築するために、新世紀に向けて全学的な国際意識の向上を推進するとともに、学術研究教育の国際性、先端性への対応を必須の課題とし、教育研究の両分野における国際交流、国際協力を強力に推進しなければならない。この構想を実現するためには、多様かつ総合的な国際的連携の発展及び国際的ニーズに対応すべき留学生教育システムの充実強化が必要である。

■1. 教育研究の国際交流について

九州大学における国際交流は大学間交流、部局間交流、個人的レベルの交流において、これまである程度の実績をあげてきたが、今後は量的拡大よりもむしろ質的充実を重視し、交流の具体的実績をあげることをめざさなければならない。このためには受入れや働きかけにおいて積極的な発信型の国際協力の姿勢が必要である。さらに交流すべき機関等も大学のみでなく広く民間の研究機関、団体も含み、多様な人材の参画を求める柔軟な姿勢が求められる。とくに、COE構想に基づく九州大学の国際的連携が、地方自治体、民間及び西日本地区の他大学の国際交流諸機関、団体との密接な協力体制にも配慮し、地域的国際交流としても推進されることが重要である。

このような研究、教育の国際的ネットワークの中で、多様な国際交流の機能に対処すべき集中的総合的管理機関を九州大学に設置することが必要である。さらに、九州大学がおかれた歴史的、地理的環境、今日の国際情勢に鑑み、とくにアジア・太平洋地域との連携の強化が要請されている。この要請を実現するためには、九州大学において、学際的な研究機関としてのアジア研究・資料センターを設立することも強く望まれる。

■2. 留学生教育について

外国人留学生の受入れと教育及び留学生派遣は、国際的連携強化の重要課題であり、その充実と発展を可能にする具体的な方策が必要である。九州大学における留学生総数は、平成6年現在、約800名(学部留学生11%、大学院56%、研究生等33%)であるが、21世紀初頭にはほぼ倍増することが予測される。これらの大量の留学生を受け入れ、充実した教育環境を実現するため、ハード・ソフト両面において抜本的に体制を整備、強化する必要がある。即ち、留学生に対する日本語、日本事情等の教育、また、留学情報、文化交流、カウンセリング、生活ケア等の集中管理を行う留学生センターの機能拡充、さらに、留学生特別カリキュラム、プログラム等の推進、奨学金制度の充実、留学生宿舎の完備、国際交流にかかわる全学的な事務体制の強化等についての整備がなされねばならない。

■3. 外国人の任用について

九州大学の教育研究における国際的連携を強化し、国際的機関としての大学の役割を充実することをめざし、優れた人材を確保するため任用期間の見直し等を含め、外国人教員及び外国人教師*の任用、外国人研究者等の招請をさらに進める必要がある。九州大学における外国人教員及び外国人教師は、現在30余名、外国人研究者等は700余名(平成5年)であるが、国際交流の充実、あるいは短期訪問の外国人研究者の増加に伴い、この数はさらに急速に増えることが予想される。この状況において研究面における国際的共同研究だけではなく、外国人研究者の教育面での活用も強く望まれる。教育研究プログラム、特別カリキュラム、研究拠点形成プロジェクト等への積極的参加を求めることは、この意味で重要である。

外国人教員

1. 国立又は公立の大学において任用する外国人の教授、助教授、又は講師をいう。(国家公務員一般職、本学の任期は3年)

外国人教師

2. 国立大学及び国立高等専門学校において、外国語科目または専門教育科目を担当させるにたる高度の専門的知識または技能を有する外国人で、国立大学等が常勤の教師として雇用する者をいう。(雇用契約期間は1年)

国際的連携の強化の方向

以上のような課題を解決し、九州大学の国際的連携を強化するには、次のような具体的な方策が必要である。

■1. 国際交流及び国際協力の強化

  1. 国際交流協定締結校との研究・教育交流(研究者、学生)の具体的計画を長期・短期について策定し、実施する。
  2. 国際交流、国際協力をさらに充実強化するために、世界の各地域に、交流協定締結大学あるいは国際交流機関を対象として「交流拠点校(機関)」を設置する。
    「交流拠点校(機関)」は当該地域と九州大学との国際交流の中心的役割を果たすとともに、九州大学に関するアプトゥーデイトな総合的情報を提供する。

  3. 九州大学における国際交流体制強化のために地方自治体、民間及び西日本地区の他大学の国際交流機関との連携を推進する。この協力体制のもとに、国際的連携に関する情報交換、国際学会、セミナー等の開催、プロジェクトの開発等を行う。
  4. 国際交流による共同研究及び国際協力を奨励するために次の事項を重点的に支援する。

 

ア.国際的、先端的研究拠点形成プロジェクトの開発
イ.国際的研究チームの育成
ウ.国際シンポジウム、ワークショップ等の開催
エ.技術協力等を含む国際協力プロジェクトの推進

 

  1. 「国際学術センター」(仮称)を設置し、九州大学における国際的研究教育の中心的機能を担う。このセンターでは国際交流、共同研究、国際学会、サマーセミナー、交流拠点校(機関)との連携、地方自治体、民間の国際交流機関との連携、学術情報ネットワークの機能を管理調整する。また、国際的連携に関するサービス業務(データベース管理、留学情報、図書室、翻訳サービス、語学研修等)も行う。国際学術センターは、国際的な教育プログラム及び研究プロジェクトを推進するとともに、これらの教育研究における国際協力の基本理念及び実態に関する多角的研究を行う。
  2. アジア、太平洋地域との連携を強化し、アジア研究を推進するために「アジア研究・資料センター」(仮称)を設置する。アジア諸国の政治、経済、法律、文化、歴史、社会、環境、科学技術、医療、福祉等について学際的研究を行い、その成果を大学院教育、教育研究プログラム等に反映させる。民間のアジア研究機関との協力も密接に行う。

■2. 派遣留学生・外国人留学生教育・交流

1. 大学院教育における国際的連携強化のために次の事項を充実させる。

 

ア.大学院留学生の受入れをさらに推進するために(英語使用の)留学生特別コースを設ける。


イ.外国人留学生の学位取得(博士及び修士)を推進するとともに、短期ノンディグリー留学生教育コースも合わせて充実させる。


ウ.日本人博士課程学生の外国大学留学を奨励する。とくに、交流協定締結校との交流を推進する。


エ.大学院教育課程に特別カリキュラムとして領域横断型教育研究プログラムを設け、国際的視野に立つ研究を自由かつ独創的に行うことを奨励する。このプログラムでは外国人留学生、日本人学生が共に参加する。


オ.留学生定員枠を導入する。

 

2. 系教育課程における国際的連携強化のために次の事項を充実させる。

 

ア.系課程における留学生受入れ及び派遣を活性化するために留学生交換制度を定着させる。とくに、交流協定締結校との交流を推進する。


イ.単位互換制度を積極的に推進するとともに、1年以内の短期留学生教育を充実させる。


ウ.各系において(英語使用の)留学生用コースを常時開講する。


エ.留学生センターにおける日本語教育を一層強化するとともに、民間の日本語教育機関との連携も検討する。日本事情教育については留学生センターのほかに大学院、系においてもコースを開設する。


オ.留学生定員枠を導入する。

 

3. 大学院及び系における国際的教育充実のためにさらに次の事項についての整備が必要である。

 

ア.九州大学における国際意識の向上を推進し、さらに国際労働市場に適合する人材を育成するために各系及び大学院において新たなカリキュラムを導入する。


イ.九州大学においては、外国人留学生は通常は正規の教育課程に組み入れられ、日本語による教育を受けるが、留学生教育において言語をバリアとしない配慮も同時に重要である。このために留学生教育におけるバイリンガル化が積極的に進められなければならない。この方策として各研究科及び系の留学生コース、さらにいくつかの学際的教育研究プログラムにおいて英語使用の教育が可能なカリキュラムを設けることが必要と考えられる。また、これらのコースにおいては、原則として日本人学生の履修も認めるものとする。


ウ.九州大学における外国人留学生の出身地域による割合は、およそ、アジアが85%であるのに比し、欧米は5%(平成6年)に過ぎない。グローバルな視点に立てば、今後も欧米諸国からの留学生受入れを引き続き推進する必要がある。


エ.優秀な留学生を受け入れるために何らかのスクリーニングシステムが必要と考えられる。この方策として新たに開発された「私費外国人留学生統一試験」及び「日本語能力試験」制度を継続的に活用する。


オ.留学生交流協定締結校の留学生に対する授業料不徴収制度の適用をはじめ、授業料減免制度を整備する。


カ.九州大学における国費留学生は約30%であり、約70%は私費留学生である。この傾向は今後も続くと予想される。したがって主として私費留学生に対する奨学金制度がさらに充実されなければならない。このために民間奨学金団体との密接な連携が必要である。


キ.外国人留学生生活の安定のために生活保証(人)制度の整備、保険制度の活用、民間のスポンサー等によるサポートシステムを積極的に導入する必要がある。


ク.「留学生センター」における受入れ体制及び教育機能の充実が必須である。近い将来、1,000人を越えると予測される大学院及び系留学生の基礎教育センターとして、受入れ体制と教育システムの拡充がなされねばならない。即ち、日本語教育、日本事情教育、比較文化論教育、英語使用の特別コース、セミナー、サマースクールの企画等の教育機能をさらに充実させるとともに、大量の留学生教育に対応すべき新たなカリキュラムを開発する必要がある。また、修学、生活指導等のカウンセリング機能、さらには異文化間コミュニケーション、日本人学生との交流、地域社会との交流のガイダンス等、多様な機能を果たすことができる機構を持たなければならない。


ケ.帰国外国人留学生のアフターケアとして本国での研究教育を実際的に指導するための元指導教官等の派遣制度、再来日短期研修制度等を推進する。

■3. 外国人教員等、宿舎、管理体制等

  1. 外国人研究者等の研究拠点形成プロジェクト、教育研究プログラム等への参加を積極的に推進する。
  2. 短期訪問の外国人研究者等については、処遇を改善し、受入れを促進する。
  3. 外国人教員の任用をさらに促進し、優秀な人材を確保するために、リクルートシステム(公募方法、人事、情報提供のノウハウ等)を「国際学術センター」において整備する。
  4. 「国際学術センター」及び言語文化部等において外国人教員による日本人研究者、派遣留学生、事務官等を対象とした語学研修、外国事情紹介等のサービスを常時総合的に行う。
  5. 21世紀に向けて確実に増加する外国人教員、短期、長期の外国人研究者等の宿舎(家族用も含む)及び留学生のための宿舎(日本人学生との混住型が望ましい)の完備が必須である。(現在、九州大学留学生用宿舎利用者は、全留学生中28.6%であり、約半数が民間アパート等を利用している)宿舎確保については、広く民間企業社員寮等の利用も開拓の必要がある。さらにこれらの外国人研究者等の子弟の教育環境に対する配慮も必要である。
  6. 九州大学における国際交流、留学生教育の機能を効率的に進め、かつ、国際的イメージを高めるために、新キャンパスにおいては「国際学術センター」、「アジア研究・資料センター」、「留学生センター」等を中心とする国際交流ゾーンを設けることが望ましい。
  7. 新たなCOE構想のもとで国際的連携推進を担当する事務機構の再編、強化が必要である。
  8. 国際的連携に関する総括は副学長担当とする。

■4)国際的情報交流

  1. 国際的教育研究環境を実現するために、九州大学における総合情報ネットワークを整備する。
  2. 英文データベースとして整備された九州大学における学術情報、留学生教育情報等をインターネット等の国際情報通信ネットワークに接続して、国際的に発信し、また、世界各地からのアクセスを常時可能にすることによって教育研究活動の国際的同時性を実現する。
  3. 各種情報メディアを統一的に処理し通信できる情報ネットワークと多機能メディア端末を学内に多数配備して、研究室、教室、図書館等の情報に対する国際的なアクセスを可能にするだけではなく、電子出版、電子メール等による情報交換、研究討論等も行うことができる情報環境を整備する。