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常に問い、社会の実態を解明し、地球も産業も持続できる未来へ!常に問い、社会の実態を解明し、地球も産業も持続できる未来へ!経済学部経済 ・経営学科長 経済学府経済システム専攻長 経済学研究院 国際経済経営部門 国際経済分析講座 教授理学研究院 教授 加河 茂美

経済学部経済 ・経営学科長 経済学府経済システム専攻長 経済学研究院 国際経済経営部門 国際経済分析講座 教授

加河 茂美

今後の経済学界を牽引すると期待される注目のニュースター。工学部出身でありながら経済学が専門という異色の経歴を持つ。数理的な視点から経済を紐解き、日本経済を支える産業にフォーカスし、その研究は環境・エネルギー・資源管理政策など多岐に渡る。「常に問い、常に行動」がモットー。

今後の経済学界を牽引すると期待される注目のニュースター。工学部出身でありながら経済学が専門という異色の経歴を持つ。数理的な視点から経済を紐解き、日本経済を支える産業にフォーカスし、その研究は環境・エネルギー・資源管理政策など多岐に渡る。「常に問い、常に行動」がモットー。

プロフィール

栃木県出身。東北大学工学部で土木工学を学ぶ。大学時代は遊びに夢中でほぼ学校にはおらず、成績が悪く希望の学科を専攻できなかったという逸話も。学部の担当教員に内緒で当時新設されたばかりの同大学院情報科学研究科を受験・進学し、地域や都市、環境計画を深く学ぶ中で経済現象を追求していく研究の面白さに目覚める。修論作成時に、ノーベル経済学賞受賞者、ワシリー・レオンチェフによる経済分析法の古典に衝撃を受け、経済学への転換を決意。修士課程修了後、2年間一般企業に勤務した後、同大学院に戻り2001年飛び級で修了、博士号を取得。国立環境研究所の研究員を経て、2003年東北大学情報科学研究科助手、2006年九州大学経済学研究院助教授に着任。2016年同院教授に。2017年から経済学部経済・経営学科長、経済学府経済システム専攻長兼任。

何を研究してるの?

壁一面に書籍が並ぶ加河先生の研究室にて。「研究は簡単に答えがわからないからこそ面白い!」と熱を込めて語ってくれた。

ノーベル経済学賞受賞者、ワシリー・レオンチェフの論文のコピー。「社会を数式化できるなんて!」と衝撃を与え、加河先生を経済学の世界に引き込んだ名古典。

実際に自分の目でみることも大事、と年に2〜3回はフィールドワークを行う。

壁一面に書籍が並ぶ加河先生の研究室にて。「研究は簡単に答えがわからないからこそ面白い!」と熱を込めて語ってくれた。

現在、産業が私たちの生活を支えるとともに地球破壊の大きな原因となっていることが問題になっています。多くの企業が「環境に優しく」を掲げCO2排出量を削減していく努力を行ってはいますが、未だに環境負荷の高い製品の大量生産、大量消費の経済サイクルからなかなか抜け出せないのが実態です。この社会の実態を解明する為には、産業そのものの持続可能性を考えなければなりません。私はそういった経済システムについて様々な側面から追求し、産業が持続的に発展できるシステムがないか研究しています。

ノーベル経済学賞受賞者、ワシリー・レオンチェフの論文のコピー。「社会を数式化できるなんて!」と衝撃を与え、加河先生を経済学の世界に引き込んだ名古典。

例えばハイブリッドカー。燃費が良く、かつCO2排出量が少ないので家計にも地球にもやさしいイメージがあります。けれども車一台作る為に必要となる、資源採掘、素材加工、部品の製造、そしてそれらを船やトラックなどで輸送するのにどれだけCO2が排出されているのでしょうか?また燃費(km/l)が向上すると、その分ガソリン代が安くなるので走行距離(km)が長くなり、逆にガソリン消費量が増えるという結果も出ています。エコカー補助金などの政策によって新車を買い替える人が増え、CO2排出量がむしろ増える可能性もあるでしょう。このように、車の製品ライフサイクル全体を見たときに、果たしてCO2削減となっているのでしょうか?本当に「環境にやさしい」といえるのでしょうか。

実際に自分の目でみることも大事、と年に2〜3回はフィールドワークを行う。

生産側だけではなく、消費者視点での持続可能な行動分析や製品寿命についても研究しています。例えば、もし冷蔵庫が壊れて修理代に10万円かかると言われたらどうしますか?あきらめて新しいモノを買いますよね。しかし長期間のメーカー保障があって、修理代が無料だったらそのまま使い続けると思います。その方がよほど環境面でも良いし、経済的です。しかしそうすると企業側の冷蔵庫の生産台数が落ち、利益も当然落ちます。そこで産業そのもの持続可能性を多方面から探究していく必要性が同時に発生するのです。

国際社会においても温室効果ガスや大気汚染物質の削減緩和に向けて各国がどう協力・強調していくのかも課題です。また現在研究開発が進められている水素等新エネルギーの普及がどういう環境効果、経済効果を生み出すのかも、今後の重要な課題になるでしょう。研究結果を出すだけではなく、その結果を凝縮させ、具体的な政策に反映させ、実際に行動することが必要です。持続可能な産業システムを構築する上で鍵となるステークホルダーを巻き込んで議論ができるような土台を作り、そして具体的に有効な技術政策に生かしていく。また、大量消費に伴う環境負荷を少しでも軽減するための有効な需要政策や廃棄物リサイクル政策について研究することも私の役割であり使命です。

研究科目の「魅力」はココ!研究科目の「魅力」はココ!

複雑な社会を数式で明確化しデータ分析することで、解決策を提案できる!複雑な社会を数式で明確化しデータ分析することで、解決策を提案できる!

生活の身の回りにおける素朴な疑問から研究対象が生まれる点、そして自分で見つけた答えが社会の問題を解決する可能性がある点が最大の魅力です。モノを作る、消費する、廃棄する。経済は非常にシンプルなのに、そこに需要と供給の考え方を導入すると、複雑な問題に発展します。例えば、現状のCO2排出量や政策導入後のCO2排出量など実際に計算、分析してみないとわかりませんが、最終的な計算結果によっては、一見環境に良いと思われていた政策が実は環境に悪い政策だったということが判明するのはとってもエキサイティング。
データと毎日会話しながら、どっちの結果に転ぶんだろうとワクワクしています。結果が出た後は自分の手を離れますが、それが政策となり実際に実行され、日本経済に影響を与えるのです。研究者としての醍醐味を存分に味わえる学問だと思いますよ。

DAILY SCHEDULEDAILY SCHEDULE


OFFの1コマ

映画鑑賞をしたり、ドライブがてら温泉に行ったり、と休日は仕事を忘れおおいにリフレッシュ。中でも趣味の釣りには並々ならぬ情熱を注ぐ加河先生。糸島大入港から船をチャーター、80cmクラスの鯛を釣り上げるほどの腕前!映画鑑賞をしたり、ドライブがてら温泉に行ったり、と休日は仕事を忘れおおいにリフレッシュ。中でも趣味の釣りには並々ならぬ情熱を注ぐ加河先生。糸島大入港から船をチャーター、80cmクラスの鯛を釣り上げるほどの腕前!

先生の必須アイテムはコレ!

プログラム用ソフトウェア

エンジニアと科学者の御用達、数値計算のソフト『MATLAB/Simulink』(MathWorks社)。20年前から使っている、研究に必要不可欠なNo.1アイテム。

ノート

アイデアや思いついたことはすぐにノートに書き写し、関連する資料を挟み込むスタイル。研究テーマごとにノートは分けておらず、加河先生の頭脳が1冊のノートにすべて詰まっている。

プロジェクター

学生の研究発表の際に毎日使う、BenQのプロジェクター。常に研究室のホワイトボード前の机に置いてあり、たまに移動すると学生から「何かあったんですか?」と聞かれるほどなじみのあるモノ。

学生へのメッセージ

"研究力=人間力"。協調性が新しい発見を導く!

研究は一人でコツコツと行うイメージがありますが、各人の研究成果が組み合わされることで、次のステップを生み出していくのです。ですから、協調性やチームワークも研究への情熱と同じぐらい大切ですね。人と人の繫がりの中で、人間的に成長していくのが学生時代。今後、国際的な共同研究の機会も増えてきますので、リーダーシップも身に付けてほしいですね。チーム、組織として活性化することで、自分たちの研究が社会に役立つ可能性がより拓けてくる。他人よりも自分に厳しく、研究に打ち込んでほしい。その経験が人としての器をさらに大きくします。研究力は人間力そのもの。常にアンテナを張り、疑問点や問題意識を持って日々を過ごし、探究心を磨いてください。

取材日(2017.7)

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