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前人未踏の地で新種を発見したい。前人未踏の地で新種を発見したい。 総合研究博物館 准教授 丸山 宗利

総合研究博物館 准教授

丸山 宗利

専門分野はアリと共生する昆虫の多様性解明で、アジアでは第一人者。国内では間違いなく虫好きのトップに君臨する研究者である。

専門分野はアリと共生する昆虫の多様性解明で、アジアでは第一人者。国内では間違いなく虫好きのトップに君臨する研究者である。

プロフィール

静岡県生まれ、東京育ち。少年の頃から昆虫好き、絶対数の少ない都会の環境で、虫の存在のありがたみを感じながら成長。大学院より北海道大学大学院農学研究科昆虫体系学教室に所属、2003年博士号取得。その後、国立科学博物館で3年間、アメリカ・シカゴのフィールド自然史博物館で1年間、研究員を務める。2008年、九州大学総合研究博物館に着任。約400万点という国内最大の昆虫標本を管理しながら、日本各地、東南アジアや南米などのジャングルに自ら出向き昆虫調査を実施。多数の新種や新属を発見している。著書も多く、2014年「昆虫はすごい」(光文社新書)がベストセラーに。専門分野はアリと共生する昆虫の多様性解明で、アジアでは第一人者。国内では間違いなく虫好きのトップに君臨する研究者である。

何を研究してるの?

分類を中心に研究を進めています。分類学とは生物を体系づける学問のことで、人間でいえば哺乳類霊長目(サル目)ヒト科ヒト属ヒト、学名はホモ・サピエンスとなります。私の研究対象は昆虫になるので、新種を発見した時に、DNA解析などいくつかの手法を使って進化のプロセスを調査、体系づけていきます。

私のライフワークは「アリと共生する甲虫」の新種を発見し、その多様性を解明していくこと。好蟻性昆虫というのですが、私が今まで発見した新種の甲虫には、体長2〜3mmのハネカクシなどがいます。なぜ、好蟻性昆虫が面白いのか。例えば家に宇宙人がフラ〜ッとやってきて、いつの間にか居候しているという状態を想像してみてください。そもそもアリは他の生き物に対し攻撃性が強く、組織力を持って生きている昆虫です。外と違って天敵なし、エサも豊富で居心地抜群なのがアリの巣。この宇宙人のような虫は進化の過程で、体にある分泌腺からアリが好む臭いや化学物質を出せるようになり、形も独特です。普通なら攻撃的なアリに一蹴されるところを、アリの巣に入り込み安全に暮らしているのが好蟻性昆虫です。

アリは日本だけで約300種、東南アジアで約2000種、世界で1万種はいると言われています。そのアリと共生する昆虫は…一体どれくらいいるんでしょう?想像もつきません。新種を発見する度に必ずDNAを抽出し、配列を調査します。そこで身体のつくりやどの種に似ているかなどを調べ、家系図のような系統図をつくります。そして、彼らの進化の過程を解明していきます。好蟻性昆虫は新種ばかりで先が見えませんが、それだけにまだ知り得ぬ昆虫の多様性を発見できるチャンスが溢れ、研究の可能性は無限とも言えます。

研究科目の「魅力」はココ!研究科目の「魅力」はココ!

生き物としての多様性&複雑性を解明していける生き物としての多様性&複雑性を解明していける

昆虫の歴史は約4億年、陸上で暮らす生き物の中で、約80%を昆虫が占めているといわれています。彼らは人間よりはるか以前から、組織で狩りをしたり、奴隷制度があったり、農業、牧畜、婚姻贈呈、戦争など生き残る為にさまざまな活動をしてきました。いわば人類の先輩ですよね。人間世界では善悪とは何かという道徳や、共に生きていく為の共通の価値観が行動において重要視されますが、昆虫たちを見ていると生き物として本来の行動をしていることがわかります。生き物というものは多様で複雑なもの。もちろん人間もそうだと思うんですね。その多様性と複雑性を受け容れた上で、冷静に物事を理解・判断することが重要なんだと思います。生きることの多様性と複雑性。その事実をまざまざと知らしめてくれる存在が昆虫です。そこに大きく魅せられますね。

DAILY SCHEDULEDAILY SCHEDULE


OFFの1コマ

市内に農園を借りている丸山先生。週末はもっぱら畑作業。海外出張最中も「放っておいても元気」と、イキイキ育ち実る野菜たちにも興味津々。今のところ野菜分野は自給自足。市内に農園を借りている丸山先生。週末はもっぱら畑作業。海外出張最中も「放っておいても元気」と、イキイキ育ち実る野菜たちにも興味津々。今のところ野菜分野は自給自足。

先生の必須アイテムはコレ!

ピンセット

解剖には絶対の自信を持つ丸山先生。体長5mm以下の昆虫を扱うピンセットには「つまむ時の柔らかさ」を重視。愛用は20年以上、手入れしながら使用している鉄製のもの。

深度合成撮影装置

「写真も好きですねぇ」と著書の写真は自身で撮影。マクロレンズを使っても体長2mmの昆虫全身にピントを合わすのは難しく…。そこで各部位をクリアに撮影して、後に合成!

描画装置

解剖した昆虫の各部位を絵に描いて大事な情報を取り出す際に、必要なのがコレ。顕微鏡でのぞいた画面に手が映り込み、触覚などミリ単位の部位を正確に描き写すことができる。

学生へのメッセージ

面白いことだけをやってほしい!!

「知りたい」、それが始まりであり、原動力です。ノーベル賞受賞者も最初から「〜の為に」と大義名分を掲げて研究していたわけじゃないと思うんですよね。私の研究も終わりがないし、産業に何の貢献をしているわけでもない。でもとにかく面白いし、その面白さをより多くの人に伝えたいという想いを持って研究にあたっています。最終目標までには、やりたくないこともあるかもしれません。でもそれは好きなことを続ける為には必然のこと。自分にウソをつかず、悩んだらシンプルに立ち返って行動してみてください!

取材日(2015.12)

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