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地球に優しいクリーンエネルギーを新たに生み出すシステムをつくりたい!地球に優しいクリーンエネルギーを新たに生み出すシステムをつくりたい! カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(通称I2CNER「アイスナー」)触媒的物質変換研究部門 准教授 高橋 幸奈

カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(通称I2CNER「アイスナー」)触媒的物質変換研究部門 准教授

高橋 幸奈

太陽電池の実用化を目指し、あらゆる材料を組み合わせ、新たなエネルギー変換システムの構築に挑むI2CNERの期待の新星。研究一筋、その華やかな風貌と地道な実験活動のギャップが魅力の若手ホープである。

太陽電池の実用化を目指し、あらゆる材料を組み合わせ、新たなエネルギー変換システムの構築に挑むI2CNERの期待の新星。研究一筋、その華やかな風貌と地道な実験活動のギャップが魅力の若手ホープである。

プロフィール

愛知県岡崎市出身。小さな頃から本の虫で、得意教科は国語でむしろ理数系は苦手分野。「わからないことを突き止めたい」という気持ちが強く、読書もその一環で難しい科学の本も読破するほど。中学生の時に本で「研究者」という職業を知って惹かれ、実験好きも高じて化学の道へ。東京大学理科一類に入学、部活動である化学部にて実験三昧の日々を送る。修士課程より東京大学生産技術研究所の立間研究室で学んだ後、2007年、博士(工学)学位取得。そのまま生産技術研究所に就職し、特任助教を3年間務める。2010年8月から、九州大学工学研究院応用化学部門山田研究室へ研究の場を移し、現職。専門は光電気化学、光触媒、エネルギー変換。一連の研究に対する評価は高く、2014年電気化学会進歩賞(佐野賞)、2018年分析化学会奨励賞などを受賞。工学部応用化学の教員ソフトボールチームのメンバーとして活躍するなど、意外な一面も持ち合わす。I2CNERの中で最も注目を浴びている、若手女性研究者である。

何を研究してるの?

所作は美しく、物静かで上品な印象の髙橋先生。研究畑を歩んできただけに、話ぶりには強い芯を感じさせる。

分光照射装置を使い、どの波長で太陽電池が機能しているかを調べる髙橋先生。

2014年6月の国際会議に出席中。

所作は美しく、物静かで上品な印象の髙橋先生。研究畑を歩んできただけに、話ぶりには強い芯を感じさせる。

クリーンエネルギーは太陽光、水素、水力、風力、地熱、バイオマスなどがメインですが、実用化=工業化のレベルでの決定的な解決にはまだ至っていません。エネルギーを電気に変換する効率が高く、かつ低コストだと実用化の可能性は高くなりますが、現在この変換効率の数値アップがひとつの大きな課題とされています。私は光を照射することにより触媒作用を示す「光触媒」をベースに、太陽電池の開発や、新エネルギーの創成に向けて研究を行っています。今まで、酸化チタンや水酸化ニッケルなど無機化合物を組み合わせ、還元エネルギーや酸化エネルギーなど、エネルギーを貯蔵する研究を行ってきました。

分光照射装置を使い、どの波長で太陽電池が機能しているかを調べる髙橋先生。

現在メインで行っているのは金属ナノ粒子を光触媒の一部として利用する「プラズモン誘起電荷分離」のメカニズムの解明です。金属ナノ粒子はプラズモン共鳴(入射光によって誘導される電子の集団振動)を起こすことがわかっているので、無機化合物以外でも、有機化合物、無機と有機のハイブリッドの材料を組み合わせ、効率良く光エネルギーを活用すべく、材料を変えながら地道に実験を繰り返しています。

2014年6月の国際会議に出席中。

私が目指しているのは新しいエネルギー変換システムの構築で、現在は光電気化学を中心に研究していますが、今後は分野にこだわらず、あらゆる視点からアプローチしたいとも考えています。クリーンエネルギーの中でも、太陽電池は一般的となりましたが、その種類は多様で、結晶シリコン系太陽電池が世界トップのシェアを占めています。私のゴールは、環境や用途に特化し、細分化したエネルギー変換システムを作り出すことです。そのために私の今までの経験と、現在研究している光触媒や太陽電池などを応用して、例えば従来のシリコンからではなく、新しい素材から太陽電池を作ることなどにチャレンジしています。今後のエネルギー戦略において、クリーンエネルギーの重要性はますます増加していくことでしょう。メカニズムの解明とともに、あらゆるクリーンエネルギーの効率的な変換システムの構築に力を注いでいきたいと思っています。

研究科目の「魅力」はココ!研究科目の「魅力」はココ!

わからないものは面白い。面白さへの追求が社会に貢献できる!わからないものは面白い。面白さへの追求が社会に貢献できる!

研究の魅力は、想像していたことと全く違う結果が起こること。考えもつかなかったことが、目の前に現れた時、「まだ知らないことがあるのか!」とゾクゾクしますね。だから化学は面白いんです。わからないものは面白い。その面白さを追求した結果、社会に貢献できれば素晴らしいことだと思っています。

新しいエネルギー変換システムの構築においても、メカニズムがわかっていない分野もたくさんあります。わからないことが、研究を続けることでわかるようになってきて、先が見えてきた時には強い手ごたえを感じますし、ワクワクが止まりません。

研究に男性も女性もなく、そこに熱意があるかどうかだと思っています。ただ、私は研究する上での環境にとても恵まれていますね。九州大学のI2CNERにはマサチューセッツ工科大学(MIT)やスイス連邦工科大学(ETH)など、世界トップ大学の研究者や民間企業の関係者が在籍しています。ドイツのシンポジウムに出席したり、交換留学したりと国をまたいだ交流も、新エネルギー創成に力を入れるI2CNERならでは。世界最大規模の最先端の設備が整っているのは、研究する上で大きな魅力ですね。分野の違う先生とディスカッションする機会が多く、大いに刺激になります。最近では、女性研究者も多く活躍しているので心強いですね。

DAILY SCHEDULEDAILY SCHEDULE


OFFの1コマ

先生仲間に誘われて3年前から始めたボルダリング。今までスポーツの経験がない髙橋先生は普段車移動なので、身体を動かすこの時間をとても大切にしているそう。「研究はゴールがないけど、ボルダリングはわかりやすいゴールがありますしね(笑)」と理系の先生らしい言葉も。またデパートめぐり、ショッピング&グルメもオフの楽しみ。また紫外線を当てると光る石を収集する鉱石マニアの一面もあり、自ら海岸に探しに行くこともあるそう。先生仲間に誘われて3年前から始めたボルダリング。今までスポーツの経験がない髙橋先生は普段車移動なので、身体を動かすこの時間をとても大切にしているそう。「研究はゴールがないけど、ボルダリングはわかりやすいゴールがありますしね(笑)」と理系の先生らしい言葉も。またデパートめぐり、ショッピング&グルメもオフの楽しみ。また紫外線を当てると光る石を収集する鉱石マニアの一面もあり、自ら海岸に探しに行くこともあるそう。

先生の必須アイテムはコレ!

ステーショナリー

「好きなもの、美しいものに囲まれて仕事がしたい」という髙橋先生。万年筆とボールペンはモンブランと伊東屋。実際に使用するペーパーナイフは専門店や海外出張の時に購入するそうで、一番のお気に入りは右から4番目のスペイン製のもの。

コーヒーメーカー

昇進祝いに東京大学時代の恩師・立間徹先生からいただいたコーヒーメーカー。コーヒーを注ぐのはマグカップではなく、注いだらハート型になるカップ。髙橋先生らしいチョイス!

iPad mini

スマホ替わりに使用しているというiPad mini。スケジュール管理、写真撮影、アイデアメモなどはコチラを使用。常に持ち歩いているので、飲み会の出し物などで、学生が先生のモノマネをする時はこのアイテムが必須なんだとか。

学生へのメッセージ

好きなことに関われるのはとっても幸せなこと。
もっと好きになるために、思いっきり追求してほしい!

興味があり、好きなことだけを追求できる場が大学です。自分が面白い、楽しい、と思ったことはどんどん追求していってほしいですね。特に研究の場合はゴールがないので、くじけそうな時もあります。実際に研究には時間がかかりますし、毎日夜遅くまで実験室にこもることもあります。これを仕事場だと思ったら、ブラック企業と変わらないぐらいかもしれません(笑)。
でも私はどんなにゴールへの道のりが長くても、研究がうまくいかなくても、ブラックと思ったことはないですね。これは仕事にもあてはまると思いますが、研究は本人が楽しんでやるもの。やらされている感を感じたら、たちまち研究がつらくなります。

学生時代、恩師から「理想がないと研究はできない。初めから、これはできないだろうと思っている人は、決して実験はうまくいかない」と良く言われました。くじけそうになっている時は、大体視野が狭くなっている時です。これは研究に限らず、日常生活でもそう。そんな時は、一歩ひいて周囲に目を向けて、自分を客観的に見ると、きっと新しいヒントを見つけることができるでしょう。

進路に悩んだ時は、自分は何が好きか、そしてそれをどれだけ好きか、を考えてみてください。研究でも、学問でも、仕事でも好きなことに関われるのはとっても幸せなこと。好きなことがないという人もいますが、小さなことでも必ずあるはずです。この大学という自由な場で、好きなことをもっと好きになれるよう自分の興味を思いっきり追求していってください!

取材日(2018.6)

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