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すべての言葉の裏に発見がある英語を話せる、書ける日本人へ!すべての言葉の裏に発見がある英語を話せる、書ける日本人へ!言語文化研究院 言語環境学部門 准教授、共創学部 准教授 内田 諭

言語文化研究院 言語環境学部門 准教授、共創学部 准教授

内田 諭

言語学(英語)を教育へ応用し、数多くの辞書や参考書を編著。未来を担う人づくり、真のグローバリゼーションへと導く若手言語学者。学生時代、競馬に夢中になってオッズ分析ソフトを趣味で作成、その技術を自作の英作文トレーニングソフトに生かす等、アイデアマンでもある。

言語学(英語)を教育へ応用し、数多くの辞書や参考書を編著。未来を担う人づくり、真のグローバリゼーションへと導く若手言語学者。学生時代、競馬に夢中になってオッズ分析ソフトを趣味で作成、その技術を自作の英作文トレーニングソフトに生かす等、アイデアマンでもある。

プロフィール

福岡県生まれ、奈良育ち。言語学者で大学教授、多くの辞書を作った父の影響を受けて育つ。幼いながらも「辞書によってなぜ日本語と英語の意味が違うのか?」と疑問と好奇心を抱き、東京外国語大学欧米第一課程英語専攻(当時)に入学。弓道部活動に力を入れ、文武両道の充実した青春時代を過ごす。2013年に東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻で博士号を取得。2010年より母校東京外国語大学での講師を経て、2014年より現職。主な編著作に『オーレックス英和辞典』(旺文社)、『連関式英単語LINKAGE』(Z会)などがあり、全国の公私立高校のシェア4割を占める教科書作成にも携わる。また自ら学習ソフトを作成、講義で使用する等、研究の成果を広く教育現場に還元。異分野融合研究にも精力的で、「シーマン人工知能研究所」(http://seaman.ai/)のゲームクリエイターと共同研究も行っている。2018年4月新設の共創学部の専任教員であり、広報委員会のメンバーも務める。

何を研究してるの?

気さくな雰囲気で話してくれる内田先生は若手最前線でイベントや他業種との連携などで活躍中!2018年からスタートする共創学部にも参画している。

一般書籍から辞書や英語の教材など、携わった書籍は多岐にわたる。持っている英語の本に「内田諭」の名前が記載されているかも。

「英語は、単語単体ではなく、複数の単語のフレーズ、コロケーション(連語)で覚えるほうが効率的ですし、英語を話すときに楽ですよ」と内田先生。

気さくな雰囲気で話してくれる内田先生は若手最前線でイベントや他業種との連携などで活躍中!2018年からスタートする共創学部にも参画している。

言葉は人間が用いる意思伝達手段。言葉一つとっても、裏にはいろんな知識の繫がりがあって、実はそこを見ないと、「言葉が持つ意味」を本当に理解できないのです。例えば「買う」という単語は、その背景にある商取引、お金を払って何かをもらうという知識がないと言葉として成り立ちませんよね。つまり「買う」という単語を聞くことによって、商取引の知識が喚起されるのです。このような考え方をするのは「フレーム意味論」で、認知言語学の一つです。

私は言語学の研究を英語学習に応用する「応用言語学」も大きな研究テーマにしています。言葉の習得には、語彙力という側面が大きく関わってきます。例えば「電話」。これは英語ではすぐにphoneという単語を思いつきますよね。しかし、「電話に出る」、「電話を切る」、「電話を借りる」と英語ですぐに言えますか?特に受験勉強に重きを置いた日本の教育では、頭の中で英語を覚える時に、単語一つ一つを日本語に結び付けて「phone=電話」、「cut=切る」等、一対一で覚える傾向があります。ですので「電話を切る=cut phone」というような間違った英文を作成しがちなのです。語彙にはパッと見て意味がわかる受信語彙、自分で話し、書くことのできる発信語彙の2通りあります。日本人の多くは受信語彙力が高く、発信語彙力が低い状態です。そこで私は発信語彙力を強めるために、「コロケーション(連語)」(単語と単語の組み合わせ)の知識導入を教育現場に推進しています。

一般書籍から辞書や英語の教材など、携わった書籍は多岐にわたる。持っている英語の本に「内田諭」の名前が記載されているかも。

「電話を切る」の正解はhang up the phone。言葉のほとんどは単体で機能せず、複数の単語の慣用的な結びつきで出来ています。そこでコロケーションを活用し、フレーズとして身に付けることで、一つの単語から多くの表現方法を得ることができるのです。コロケーションを活用すると、まず自然な英語になる。また英語を話す、書くという発信の土台になる。そして単語の意味を深く理解できる。このように大きなメリットが3つあります。

「英語は、単語単体ではなく、複数の単語のフレーズ、コロケーション(連語)で覚えるほうが効率的ですし、英語を話すときに楽ですよ」と内田先生。

コロケーションを活用しつつ、発信語彙力を上げるには言語のデータベース「コーパス」が大いに役立ちます。コーパスは世界中で使われている言葉の実例を収集して、品詞やジャンルなどの属性を付与した研究目的のデータベースですが、一般でも無料で利用でき、数億語の中から単語と単語の組合せの頻度を調べることができます。bigとlargeの違いは?と分析していくと、直後に繋がる単語からその違いが見えてきます。big business、big chance、big difference…。large scale、large number、large population…。繋がる単語の共通点を調べるとbigは主観的な大きさを表し、largeは測定可能な客観的な大きさを意味することがわかりますよね。

冒頭の認知言語学に戻りますが、例えば感情。形のない感情は液体に例えられることが多いんです。怒りがたまる、怒りに満ち溢れる…実は英語でも同じ表現で、各国の文化により怒り=液体をためる容器の喩えは違うこともあります。このように言葉を「見る」ことによって、私たちがどう世界をどう捉えているか、言葉を使ってどう世間を認知しているかがわかるんですね。言葉の裏には本当の意味が隠されています。それらを効果的に学習することで、日本人の発信語彙力を高めることを私は目標としています。

研究科目の「魅力」はココ!研究科目の「魅力」はココ!

言葉を分析することで新たな発見を見出せる石はすべてを語るー46億年来の地球の歴史を知る

毎日、何の気なしに使っている言葉にメスを入れ、客観的に言語学の理論や、コーパスを使って切り込んで行けるのが面白いですね。そこに必ず発見があるんです。普段使っている言葉なのに、実は意味を間違えて捉えていたり、それが一般的にまかり通っていたり。例えばhighとtallの違いってパッと説明できませんよね。日本語の意味は「高い」、それだけ。それは教科書にも書かれておらず、結局、普段見えていないモノ。だから分析していかないと違いがわかりません。その結果、発見を見出せるのが面白いんです。

もしそれがまだ辞書に載っていないとしたら、新たな知見を取り入れる余地があるということ。この発見は絶対役に立つ、便利だ、みんなに知らせたい!それを辞書に入れるという形で実現できたら、嬉しいです。発見と自分の直感を、応用研究の出口=教育まで持って行けることが、すごく面白い!教育現場に自分の研究を還元することで、将来を担う人づくりにも携われるのも魅力ですし、やりがいですね。

DAILY SCHEDULEDAILY SCHEDULE


OFFの1コマ

「研究室には学生からのプレゼント、魚譜431選のポスターが!船舶免許も取得するほどの釣り好きで、良く糸島の釣りスポットへお子さん2人を連れて行っていたとのこと。最近はなかなか芳しい成果が得られず、お子さんが付いてきてくれなくなったと嘆く先生。年に1、2回は家族で九州内をドライブ旅行。実は海外旅行はあまり好きではないとか…!?研究室には学生からのプレゼント、魚譜431選のポスターが!船舶免許も取得するほどの釣り好きで、良く糸島の釣りスポットへお子さん2人を連れて行っていたとのこと。最近はなかなか芳しい成果が得られず、お子さんが付いてきてくれなくなったと嘆く先生。年に1、2回は家族で九州内をドライブ旅行。実は海外旅行はあまり好きではないとか…!?

先生の必須アイテムはコレ!

辞書

研究室と家の分を合わせると100冊以上はあり、先生、お父様が作った辞書もたくさん。中でもコロケーション辞書をヘビーローテーション。いろんな表現法を引き出せるので、原稿を書く時に良く利用するそう。

ノートパソコン

国内、海外出張が多いのでノートパソコンは必須。でも移動中は使用せず、代わりに小説とリップクリーム(飛行機内は乾燥するので)がお供。

デジタルペーパー

SONY製を使用。「液晶じゃないので論文を読んでも目が疲れず、パソコンと同期できて便利!」という最近のお気に入り。「一度出張先で電池切れになって全く意味をなさなかったことも…(笑)」。

学生へのメッセージ

身の周りのモノに目を向けて
発見する喜びを感じよう!

普段から何気ないモノに目を向け、意識して関心を持って欲しいですね。言葉ももちろん、家族、友人、生活していく上で身の周りに存在しているもの、すべてに対してです。当たり前のように使っている言葉を上手に使おう、分析しようと意識すると、今まで知らなかった発見があり、その時、初めて客観的に言葉を見ることができるんですね。家族や友人、身の回りに対しても同じです。自分が真ん中にいると視野が狭くなり、気付かないことがたくさんあります。一歩引いて客観的に考える視点を身に付ければ、多くの発見があり、何かを判断する時に、一生役に立つはずです。

今年4月、いよいよ共創学部が開講します。英語は文理どちらにも活き、グローバリゼーションを生きるには、必要不可欠な言語です。語学ができればコミュニケーションが上手くできるということはありません。客観的に見て、考えて、その言葉の背景を知る。そして自分の経験や学習、直感と融合した時、初めてコミュニケーションが成り立つのです。ぜひ、一緒に大学で学び、発見に溢れた充実の日々を過ごしましょう!

取材日(2017.10)

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