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5Kyushu University Campus Magazine_2010.7イトが高いんですね。けれどもサービスなどの業界では、ソフト面のウエイトがはるかに高いわけです。ものづくりで戦後の日本を復興させた人たちが、「これでやってきたんだから、もう一度これでやろう」とおっしゃっているんだと思いますが、私は、ちょっと違うんではないかと思っています。有川 日本では、状況が悪くなると、ついつい昔のよかった頃に回帰しようとしがちです。けれども現在は、知識基盤社会になっていますし、ICT(Information and Communication Technology)の時代ですので、もう一工夫が必要です。これまでのものづくりは、一つのものを作ったり、一つの技術を確立したりすることを意味していましたが、現代では、個々のものづくりにとどまるのではなく、もっとトータルに、社会基盤整備そのものも含めてものづくりと言えばいいんだと思います。そしてそのような社会システムを構築して提供していけば、きっと海外にも受け入れられると思います。ファン もうひとつ日本について感じるのは、組織がまだまだ開放的ではないということです。スタッフが企業間で異動することはほとんどありませんよね。日本はこれまで多くの分野で世界をリードしてきたにもかかわらず、今や次々に追い抜かれているのを見るのはとても残念です。アメリカも追われる立場ではありますが、次々に新しい分野を開拓しています。社会の仕組みがオープンなのです。その点では、留学生の受け入れを拡大するという九州大学の目標は素晴らしいことだと思います。もう少し言えば、これが社会全体の中にきちんと位置づけられてほしいですね。なぜなら、現状では、卒業後に日本に残った留学生たちに、まだまだ十分な活躍の場が与えられていないと感じるからです。有川 大事なご指摘をいただきました。今、日本政府は、「留学生30万人計画」を立て、日本の大学の国際化を推進しようとしています。九州大学も10年後には約3,900人の留学生の受け入れを目指していて、全体の学生定員の4分の1くらいは外国人が占めるようにしたいと考えています。そのときの一番の課題は、日本にやってきた留学生が、卒業後に日本に残れるかという点です。彼らが日本で起業でき、そして新しい分野で活躍できるような状況になったときに、はじめてこれらの計画は成功したと言えるんではないでしょうか。安浦 こういった新しい考え方で社会を変えていこうとする中で、学生たちに対して、大学がどのようなものを用意し、そして何を学んでもらうべきなのか。アントレプレナーシップのコースもその一つであると思いますが、大学全体に対して望むことがありましたらお聞かせください。ファン いくつかありますが、まずはコンテンツをどうするかでしょう。今やディスタント・ラーニングの時代ですから、良いコンテンツがあちこちに転がっています。けれども大切なことは、これらを自分の大学に合わせて利用することです。例えばハーバードから取り入れたとしても、これを九大に合わせて利用しなければ十分な効果が得られません。それから、新たなことを始める際に、最初から全部の学生を対象として考えるのではなくて、少人数でもいいからまずスタートさせることです。最初から完全を目指して慎重に計画を練っているのでは、いつまでたってもスタートできません。やってみないとわからないこともあるわけですし、やりながら修正していくことも必要なんです。ま

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