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機能性核酸アプタマーの分子認識能を利用した化学センサー開発の一例。蛍光アプタマーセンサーを用い、脳細胞から放出される化学分子(神経伝達物質)の活動を画像化することに初めて成功した。脳疾患や精神疾患のメカニズム解明や治療法開発への貢献が期待される。タマーは、ある特定の標的分子に選択的に結合する能力を持った機能性核酸のことですが、標的分子をゲスト分子[※2]と考えると、アプタマーは非常に優れたホスト分子[※2]と捉えることができます。水中でも、特定の分子を選択的に、また、強く認識できるだけでなく、試験管内進化法という手法を用いれば、百兆種類もの核酸から極めて高い効率でホスト分子を探索することができます。私たちは、現在までこのようなアプタマーを利用したバイオセンサー開発を進めてきました。例えば、脳細胞から放出される化学分子を認識し、蛍光で検出するアプタマーセンサーの開発にも初めて成功しています。今後は、この機能性核酸アプタマーの優れた分子認識能を利用して、疾病細胞や疾患部位へ薬を届けたいと考えています。木下 具体的なターゲットなどあるのですか。山東 特に、癌を対象として、選択的癌治療などを目指したアプタマー開発を進めています。アプタマーでコーティングしたポリマーに薬を内包して疾患部位に送り届けるドラッグデリバリーツールとして使えないかという研究です。もし、実現できれば、癌治療に役立つさまざまなデリバリーが可能になります。同時に、間違ったシグナルを送っている癌細胞に、アプタマーで蓋をして、癌免疫療法の効果を高める研究も進めています。浜瀬 非常に画期的な技術だと思いますが、臨床レベルに持っていくのに課題は多いのですか。山東 理論上はうまくいくはずなんですが、アプタマーで届けられた例は世界でも多くありません。要因の一つは、アプタマーの探索が難しいことにあります。単離されたタンパク質に結合するものをとってきても、それが効くかどうかわからないんです。単離したものと実際の細胞は全然違いますから。そこで、細胞そのもの、できれば患者さんの細胞や組織そのものを用いてアプタマーを取得する手法の開発を進めています。今後は、できるだけ人に近い動物レベルで実験を進めて、臨床に持っていきたいと思っています。浜瀬 この研究の意義はどこにあると考えていらっしゃいますか。山東 現状、抗体医薬はお金がかかります。対して、化学的に作れるアプタマーは、低いコストでできるから、一般の人たちに広く活用してもらえる。抗体医薬の先をいく新しい技術として、研究する意義があると思っています。浜瀬 生体の組織や患者さん自身の細胞に最適化したデリバリーを行うという点が魅力的ですね。成功したときの社会に対するインパクトや貢献度は非常に大きいと思いますよ。山東 そう言っていただけるとうれしいです。これまでの研究も、いろいろな応用の可能性があったのですが、少し現実とかけ離れたところがありました。九大に来てからは、最終的なゴールを決めて研究をし木下 もうひとつのテーマはどのような研究ですか。山東 核酸医薬をテーマにした研究です。分子レベルで体の悪いところを発見したら、そこへどのようにして薬を運ぶのかという課題が出てきます。それに対して着目したのが、アプタマーです。アプ核酸アプタマーを利用したドラッグデリバリーの実現へ。九州大学では、人に、医療に、より役に立つ研究をしたい。Kyushu University Campus Magazine_2012.7 11

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