http://www.kyushu-u.ac.jp-kyudaikoho_82
13/36

ています。本当に役に立つものを作るには、自分の専門分野だけに閉じこもってはいられません。別の分野の研究者とコラボレートすることも必要になってきます。浜瀬 やれる研究をやるというのと、やらないといけない研究をやるというのは違いますよね。山東 そうですね。いつ解けるのかわからない不安を抱えて研究を続けるのは勇気が要ります。でも、その勇気こそ、ブレークスルーするうえで必要不可欠なものなのではないでしょうか。木下 そのように考えられるようになったきっかけなどありますか。山東 稲盛フロンティアセンターで、自分の研究室を開くチャンスを頂いたので、自分が何をやりたくて科学者になったのかを考えてみたんです。やはり、より医療の役に立つ研究をしたいと思いました。センターのコンセプトは、「人の安心・安全に向けて、50年後の未来に役立つものをつくる」。自分のやりたいこととマッチしていて、今は本当に恵まれた環境の中で研究ができていると思います。木下 ところで、先生はどうして研究の道に入られたのですか。山東 化学が好きだったということもあるのですが、母親が病気になったことが一番大きいですね。病気を治す薬そのものも分子ですから。木下 工学部を卒業していらっしゃいますね。一般的に工学と薬とは遠い気がするのですが。山東 化学が好きだったことに加えてものづくりも好きでしたから、両方できる研究がしたかったんです。木下 今後の研究における夢、または目標は何でしょう。山東 やはり、化学を専門にしているからには、分子レベルで人の体のメカニズムを解明したい。特に、時間と空間を合わせた3次元的な角度から研究を進めたいと思っています。それが、人の治療や診断に役立つのなら、こんなに幸せなことはありません。木下 最後に若い研究者や学生にメッセージをお願いします。山東 まず、「失敗を恐れるな」と言いたいですね。最近の学生は学力が落ちたといわれるけれど、そんなことはありません。その場では発言しなくても、後で実際話してみるとしっかり考えている。ただ、発言しないだけなんです。たぶん、発言して否定されるのを恐れているのでしょう。でも、批判されるのは、その研究に興味があるからなんです。それに、失敗しても、自分が気にするほどまわりは気にしていません。最後に成功すればいいのです。もちろん、自分のアイディアを確固たるものにするために、ベーシックな勉強は必要ですよ。自分を信じて学問に邁進してほしいですね。※1 核磁気共鳴NMR(nuclear magnetic resonance)。磁気モーメントを持つ原子核を磁場の中に入れ、特定の周波数の電磁波を与えると、共鳴してその放射エネルギーを吸収する現象。結晶や分子の構造分析に、医学では断層撮影のMRI(磁気共鳴映像法)などに利用。※2 ホスト分子とゲスト分子特定の分子を選択的に認識できる高い秩序を持った空間を提供する分子をホスト、そこに受け入れられる分子をゲストという。左から 浜瀬健司准教授、山東信介教授、木下さんFront Runner ふろんとランナー 山東 信介化学とものづくりが好きで工学部へ進学。失敗を恐れないこと。最後に成功すればいい。12 Kyushu University Campus Magazine_2012.7

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です