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Kyushu University Campus Magazine_2013.7 5プットとアウトプットがあって間はブラックボックス。情報科学で学んだ素養は、一つのツールとして味覚センサの開発に活かされたと思っています。今泉 都甲教授は、匂いセンサの研究も進めていらっしゃるそうですが、どのような経緯で匂いセンサの研究に携わられるようになったのですか。都甲 当時の匂いセンサは、爆薬や麻薬から、微量な香料成分や食品に至るまで計測できると言われていましたが、私は無理だと思っていました。なぜかというと検出感度が違い過ぎるのです。爆薬や麻薬は、ppt(1兆分の1)単位の超高感度の検出が必要ですが、食品の匂いというのはppm(100万分の1)単位程度の感度でいいわけです。私は6桁も感度の違うものを、同じセンサの原理で計れるとは思えなかった。それで、対象を何か一つの化学物質に絞って、超高感度の匂いセンサを開発しようと考えました。例えばリンゴの香りのように、複数の化学物質が匂いを特徴づけるものもありますが、それはあまり感度を必要としません。対して、特定の化学物質が匂いを決定づけるものは、超高感度である必要があります。従来の匂いセンサはこのどちらもしようとしていて、ここに無理があったのです。今泉 現在、匂いセンサを活用してどのような研究が進められているのでしょうか。また、今後どのような展開を考えていらっしゃいますか。都甲 食品の匂い検出に関しては既に製品化されています。他には爆薬物の検出の研究も10年前から行っています。今後も安心・安全の方向に展開したいと考えていて、震災などでがれきの下になった人を探索したり、被災地のガス漏れを検出したりする超高感度センサを開発したいと思っています。今泉 先生が開発された匂いセンサは、犬の嗅覚と比べてどのくらいの感度になるのでしょうか。都甲 犬の嗅覚とほぼ同じです。条件によっては上回ることもあります。現実的に使えるレベルにまで持っていくことが目下の課題です。今泉 世界的な展開もお考えですか。都甲 グローバルには、残留農薬などを簡便に検出できるものを開発していきたいと考えています。さらに、テロなどに備えて麻薬、爆薬を迅速に見つける装置など、より社会的意義のある研究・開発を進めていく予定です。また、携帯電話に匂いセンサを付けようという世界的な流れがあり、世界中からコンタクトがあっています。将来、携超高感度「匂いセンサ」の開発にも携わる最新の味認識装置TS-5000Z付属する味覚センサは、様々な食品、飲料、医薬品の総合的な味を評価できる

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