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に反映されうるのかを主に研究しています。例えば、三つの非常に短い音があった場合、その間に現れる二つの時間間隔は、少々異なっても等間隔に知覚されることがあります。脳がもたらす「錯覚現象」です。これは、音の間隔の違いを聴き分けられないのではなく、人間の知覚システムが積極的に等間隔に近づけて聴こうとして起きる現象であるようです。オランダのライデン大学におけるten Hoopen博士との共同研究で、このことについて驚くほど安定した錯覚現象を発見し、「時間縮小錯覚」と名付けました。また、音楽や言葉のリズムのように規則性のある時間パターンと脳活動との関係は、医学研究院の飛松省三教授のチームと共同で研究しています。時間パターンの規則性、不規則性の判別が、脳内においてどの時点でなされるかを調べた結果、時間パターンを聴き終わってから0.1秒以内に大事な処理がなされるという貴重な情報を得ることができました。谷村 先生は、今年4月に設置された「応用知覚科学研究センター」のセンター長に就任されたとお聞きしています。どのようなセンターなのか教えていただけますか。中島 私たちは、環境や物、情報に取り囲まれていますが、その多くは、人間が作ったものです。それが人間に本当に適したものなのかどうか、科学的に研究し、具体的なデザインを通して世の中に問うそれが芸術工学研究院の使命だと思っています。「応用知覚科学研究センター」は、環境や物、情報を人がどのように受け取るのか、心の側から解明することを目的に、本研究院の附属センターとして立ち上げました。センター設置の背景には、本研究院に、理学、工学、芸術などさまざまな分野の専門性を持った人材が集まっていること、さらには、知覚心理学および関連分野を専門とする研究者がまと谷村 先ほど「脳科学的な研究」と言われましたが、脳についても研究されているのですか。中島 脳の研究と言えば、脳そのものの働きを研究することを意味することが多いようですが、私は脳そのものからは少し距離を置いて、心の動きがどのように脳Kyushu University Campus Magazine_2013.11  9▲音の時間構造が脳波にどのような影響を与えるか、音を聴いている人の脳活動を脳波計で 測定・解析している。今年4月に設置された「応用知覚科学研究センター」のセンター長に就任。▲70デシベル以上の遮音ができる防音室を完備。防音ダクトが あり、大人が数名入って作業し続けることも可能。写真左手前に 見えるのは、実験用のコンデンサーヘッドフォン。ひずみの少ない 音を出すことができる。▲防音室入口は二重扉に。防音 室だけ建物から分離されてお り、外の振動が伝わらないよう になっている。脳がもたらす「錯覚現象」を発見。

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