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覚コミュニケーションにおいて大事な役割を果たしています。日本語でも英語でもその中に何らかの規則性があって、それを見つけることによってコミュニケーションが成立しています。例えば、ドアをノックする時、数回、同じような時間間隔でドアを叩きますが、規則的に叩いている音がすれば、誰かがわざわざ出している音だというのがわかります。沢山の音の中から意味のある音を見い出すことができるのです。また、音を出すタイミングを少し変えただけで、言葉の受け取り方が変わることもあります。日常生活だけでなく、チームプレーが求められるスポーツの世界においても、適切なタイミングで声をかけあうことの役割は大きいと言われています。谷村 音の聴き方やリズムの捉え方は個人差があるのでしょうか。中島 外国語を上手に話せるようになるには、リズムをうまく捉えるといいと言われます。しかし、そのリズムをすぐに捉えることができる人とできない人がいます。リズムの捉え方も人によって異なり、キャラクターが表れています。この現象に関連して、私の研究室でビッグ・プロジェクトが動いています。日本語、英語、中国語の3つの言語圏で乳幼児の声を録音し、言語を特徴付ける声のリズムが発達のどの段階で現れるのか、音響信号の中に規則性を見いだすことによって調べようとしています。ゆくゆくは、規則性が現れた音声を母親に聞かせて、どのような脳活動が生ずるのか、脳科学的な研究にもつなげるつもりです。谷村 日本語が持つ特有のリズムもあるのでしょうか。中島 日本語のリズムには、一つ大きな特徴があります。基礎になっている時間の単位が非常に短いのです。この単位を「モーラ」と言います。俳句の五・七・五、短歌の五・七・五・七・七がこのモーラを数えたものですが、普通のしゃべり方では、だいたい1秒間に7つも出てきます。時間の長さで言えば、せいぜい百数十ミリ秒、早口言葉にすれば、1モーラを10分の1秒くらいまでは短くできます。しかし、あまりに短いために、音の順序が混乱してしまったことも、歴史上にはあるようです。「あたらしい」という言葉はその一例で、本来、気持ちをあらたにするというときの「あらたし」であった音の順序が、どこかで「あたらし」と入れ替わってしまい、そのまま使われつづけていると言われています。谷村 先生は幅広い研究テーマをお持ちのようですが、本来の専門分野は何になるのですか。中島 知覚心理学が専門です。しかし、本学に赴任して、工学系やデザイン系の研究者と交流するうちに興味の対象が広がり、今は知覚心理学の観点から、言語音の研究なども行っています。谷村 聴覚に興味を持たれたのはなぜですか。中島 人の心理は、言葉や音楽のリズムに大きな影響を受けます。同じことを話すにしても、リズムを意識して言う場合と、いい加減に言う場合とでは説得力が全く違います。このような現象がなぜ起きるのか疑問に思い、音と人間との関係に興味を持ちました。そして、聴覚の仕組みについて研究を行うようになりました。谷村 先生の研究には音のリズムに関するものも多いようですが、音のリズムが人に与える影響は大きいのでしょうか。中島 音のリズムというのは、聴8  Kyushu University Campus Magazine_2013.11知覚心理学の見地から、聴覚を対象に研究を展開。Front Runner :中島 祥好※1

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