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概要

九大広報 Vol.99++

失敗の原因から新たな発見につなげることがサイエンス。――先生の次の目標は?高橋:これまでは地球と月を主な対象に研究を進めてきましたが、太陽系にある惑星や衛星を、磁場を通して理解したいと思っています。地球の磁場を理解することは、ほかの惑星を理解する手がかりになります。――では、次に先生の研究対象となる天体はどこなのでしょうか。高橋:現在、日本が計画している惑星探査で一番直近にあるのは、水星の探査です。日本とヨーロッパが協同で「ベッピコロンボ」という探査機を2016年に打ち上げる予定です。その探査機にも磁力計を搭載していて、水星の磁場を測ることを計画しています。「ベッピコロンボ」による水星磁場の観測が次の研究対象ですね。水星も地球と同じようなダイナモによる磁場をもっていることはわかっているので、水星の磁場が地球の磁場と違うのか、違うとすれば何が原因なのかを明らかにしたいのです。水星を知ることで地球への理解を深めるというフィードバック的な理解ができると思っています。それによって、惑星が作っている磁場の共通する部分、つまり普遍的な部分と、惑星ごとの特異的な部分がわかってくるはずです。それを調べることによって、惑星の起源や進化にも迫ることができると考えています。――壮大で夢のあるお話ですね。先ほど、探査は長い時間がかかるとおっしゃっていたので、さらに先の目標もあるのではないですか。高橋:まだ先の話ですが、木星探査計画も控えています。木星の衛星の1つにエウロパという天体があるのですが、その衛星は液体の海をもっていて生命が存在している可能性があると言われています。実は、その海の存在は磁場の観測によってわかったことなのです。――磁場の観測は、地球外の生命発見にも重要な関係があるということですか。高橋:生命が存在するには液体の水があるかどうかが重要です。液体の水には不純物が溶けていて電流が流れる状況にあるため、電磁誘導で磁場ができます。「ガリレオ」という探査機が、エウロパの近くを通ったときに大きな磁場の変動を観測したことから液体の海が存在するということがわかったのです。磁場を測ると意外なことまでわかるという最たる例ですね。――とてもおもしろいお話で興味は尽きませんが、時間がなくなってきました。最後に現役の学生やこれから大学を目指す高校生に先生からのメッセージをお願いします。高橋:私が言えるとすれば「しっかり勉強して、たくさんチャレンジして、たくさん失敗しなさい」ということですね。いっぱい失敗すれば、それだけ成功に近づきますし、失敗の原因を探って新たな発見につなげることこそが、サイエンスだと思います。そういう意味でも、失敗を楽しんでほしいですね。失敗を恐れずにチャレンジすること。そしてチャレンジするために、まずはしっかり勉強することが大事だと思います。――今日は夢のあるお話をたくさん聞かせていただいて、本当にありがとうございました。就職活動を終えて研究室を訪ねた学生たちと談笑。学術研究・産学官連携本部 研究推進主幹(SURA:Senior UniversityResearch Administrator)三和正人 博士(農学)グラントサポートグループリーダー主に研究資金獲得支援や大学間や国際共同プロジェクトの獲得支援業務に従事14 KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2015.07