Academics 学部・大学院等

法務学府

法務学府

法務学府 Law School (Professional Graduate School)

教育理念

教育理念・目標
 本法科大学院は、これまでの議論を踏まえ、「法科大学院制度」の基本的な枠組を呈示した『司法制度改革審議会意見書』の基本的な考え方に共鳴し、次のような教育理念に立っています。
(1)司法制度改革を支える法律実務家育成の理念
 法律実務家の養成が、九州大学の社会的責務であることを認識し、国家プロジェクトとしての司法改革の中核に位置する法律実務家養成に貢献することによって、大学の新たな社会的役割を創出します。
(2)新たな法律実務家像とその育成過程の創設の理念
 21世紀のグローバル化の中で、社会が求める新しい法律実務家像を追求するとともに、その基盤を形成するためにプロセスを重視した養成課程の創設を目指します。
(3)教育連携および公益弁護活動の推進の理念
 法化社会の形成に寄与し、九州全域を視野に入れた「国民の社会生活上の医師」としての法律実務家を輩出するために、九州・沖縄地域の他大学法科大学院や弁護士会と連携するとともに、公益的な弁護活動を支援できる体制 を構築します。

 このような教育理念から、公平性・開放性・多様性を旨とした法科大学院における法律実務家養成過程を具体化するために、本法科大学院では、特に次の4点に配慮しています。

(1)公平性と多様性の重視
 入念な入試制度により、様々なバックグラウンドと高いモチベーションをもつ法科大学院生を広く受け入れ、総合大学という基盤を活かし、多様な専門領域の教員陣により、学生が体得しかつ選択可能な多種多様の学識を提供 します。
(2)社会的文脈の重視
 法律実務家を養成するという目的意識を明確にし、法理論教育の修得の機会を前提として、充実した実務基礎教育を行い、理論と実務を架橋するとともに、法律実務家が社会の中でどのような役割を担っているかを体感できる 実務教育体制をも整備しています。
(3)法科大学院間の連携の重視
 九州における基幹大学としての役割を担い、福岡県下の3法科大学院との教育連携のみならず、九州・沖縄の3法科大学院との教育連携をも重視しています。
(4)財政支援の重視
 公平性・開放性・多様性の理念を財政的に支え、社会の隅々まで「社会生活上の医師」を派遣する奨学金による財政支援プログラムを確立しています。

 本法科大学院では、このような教育理念の下で、人間に対する温かい眼差しをもち、自律した総合的判断を行い、権利を保護し救済を獲得でき、かつ社会正義を実現できる能力を身につけた法律実務家(後述)の養成を、教育目的としています。
このような法律実務家を養成するためには、より具体的には、次のような教育目的を掲げています。
(1)複眼的視座を基調とした法的能力の涵養
 法的分析の視点としては、単に裁判官的視座(第三者的視座)だけでなく、弁護士的視座(当事者的視座)をも導入するといった、いわば複眼的視座を基調とした法的能力の涵養が不可欠となります。
(2)実践的応用の中でのダイナミックな体系的知識の構築
 複眼的視座の導入には、少人数によるプロブレム・メソッドや学生の自発的疑問の発揚を重視するソクラテック・メソッド等、新たな教育手法の開発が必要であり、実践的応用の中でのダイナミックな体系的知識の構築を実 現することが不可欠となります。
(3)法学の枠に縛られない学際的視点の注入
 法的能力についての複眼的視座を導入して得た知見を、次に実践的な問題処理へと進めるには、狭義の法律学にとどまらない多様な分析視角や倫理感覚の涵養も必要となります。
(4)理論と実務的経験の融合
 実務系科目の教育を有益なものとするためには、理論的見識の高い研究者教員と、実務的経験に富んだ実務家教員との協働による、効果的な教育プログラムを開発することが不可欠となります。

 また、このような具体的な教育目的を支えるために、次のように、勉学環境・条件の整備を行っています。
(1)少人数教育の実現
 法科大学院生の参加型の授業を実現し、ダイナミックな体系的知識の構築をサポートするために、少人数教育の実現を目指しています。
(2)実務基礎科目の充実
 理論と実務との架橋を実質的に進めるために、実務系科目の充実を図っています。
(3)自学自修のための時間的ゆとりの確保
 各学年において修得可能単位に上限を設け、かつ、修了要件としての単位数を最小限にとどめることにより、自学自修のための時間的ゆとりを確保しています。
(4)主体的学修を可能にする環境の保障
 自修室や図書室施設等の学修環境を整備することを通じて、法科大学院生の主体的な学修を可能にする環境を整備しています。

養成する人材像
 九州大学法科大学院では、人間に対する温かい眼差しをもち、自律した総合的判断を行い、権利を保護し救済を獲得でき、かつ社会正義を実現できる能力を身につけた法律実務家の養成を行いたいと考えています。
このような法律実務家像に不可欠な能力は、次の通りです。
(1)広い視野に立った総合的分析能力
 グローバル化し複雑化した現代社会の中で、法的紛争をはじめ法律実務家が直面する問題も、ますます広く複雑な背景をもつようになっており、広い視野に立った総合的分析能力が不可欠となります。
(2)創造的思考による問題発見・解決能力
 法律実務家が直面する問題は、既存の理論的・経験的な知識によって分析・理解が可能とは限らないこともあるので、法律家には、創造的な思考に基づく問題発見・解決能力が不可欠となります。
(3)人間に対する深い洞察能力と倫理性
 法的問題は、人間的営為の中で生起するものであり、当事者をはじめとする関係者にとって納得いく問題の処理・解決を図るためには、それぞれの立場に立った問題理解が不可欠であり、そのためには、その主体である人間に 対する深い洞察を可能にする能力や、関係者から信頼を得るための倫理性の涵養が不可欠となります。

教育プログラム

教育内容・方法の特質
 九州大学法科大学院においては、その教育内容・教育方法の特質として、次の4点を挙げることができます。
(1)法科大学院教育における複眼的視座を基調とした「法的能力」の涵養
 法科大学院教育における法的分析のパースペクティブに、裁判官(第三者)的視座だけでなく、同時に弁護士(当事者)的視座をも導入する。
(2)少人数による新たな教育方法の導入と自修による体系的知識の修得
 複眼的視座を導入することにより、少人数によるプロブレム・メソッド、ソクラテス・メソッドなどの新たな教育手法が必須となり、院生の自主的な学修による一応の体系的知識の修得を前提として、教室ではより実践的な応用能力を育成する本来のプロブレム・メソッドを採用する。
(3)学際的視点の注入
 複眼的視座の導入は、同時に実践的問題の処理にあたって狭義の法的能力以外の分析視角や倫理感覚などの涵養をも要請する。そのためには、たとえば、基礎法学系科目や政治学系科目も、実定法教育では提供できない分析視角だけでなく、法曹が社会で法を実際に活用する場面で有益に作用する分析視角をも提供するものであり、法科大学院においても、その内容をリファインした上で、カリキュラム編成に組み込んでいる。
(4)理論と実務的経験の融合
 法科大学院において実務系科目(ロイヤリング・法交渉、法曹倫理)を教授する場合においては、ただ単に実務家に委ねるだけでは不十分であり、これらの領域について理論的な視座を有する研究者教員と、実務的経験を有する実務家教員との協働による効果的な教育プログラムを開発することにしている。

履修基準・授業方法・単位認定
履修基準・授業方法・単位認定
成績評価は、A+評価、A評価、B評価、C評価、D評価の5段階評価とし、D評価を授業科目により要求される水準に達していないものとして不合格とします。
成績評価は、1回の筆記試験のみによるのではなく、たとえば、レポートや授業での発言等を総合的に評価して厳格に行います。また、成績評価に対する院生からの不服申立審査制度を設けています。
法科大学院における学修は、形式的な単位取得に意味があるわけではなく、法曹としての実質的な基盤形成が目的であり、1学年で取得可能な単位数を充分な学修効果を期待できる合理的な範囲に制限し、標準の年間履修単位数の上限を次のように設定します。

3年制課程 1年次 40単位 2年次 36単位 3年次 40単位
2年制課程 1年次 36単位 2年次 40単位

修了要件

(1)修了に必要な単位数
 3年制課程 93単位以上
 2年制課程 65単位以上 ※
 ※ 既修認定者に28単位(3年制の1年次配当の法律基本科目群)を免除した結果です。
(2)内訳
必修科目 69単位
法律基本科目群
公法系 14単位
民事法系 32単位
刑事法系 14単位
法律実務基礎科目群
リーガル・ライティング、民事裁判実務、刑事訴訟実務、法曹倫理、模擬裁判 9単位

選択必修科目 24単位以上
法律実務基礎科目群
ロイヤリング・法交渉、リーガル・クリニック1、リーガル・クリニック2、エクスターンシップ
1、エクスターンシップ2のうちから2単位以上、法情報論、民事弁護論、刑事弁護論、公法訴訟実務、要件事実論のうちから2単位以上 4単位以上
基礎法学・隣接科目群 6単位以上
展開・先端科目群 12単位以上
科目群に関係なくそのほかの授業科目のうちから2単位以上

求める学生像(求める能力・適性等)

 本法科大学院は、公平性・開放性・多様性を重視する観点から、社会人・他学部出身者等にも広く門戸を開放します。 社会人・他学部出身者のためだけに、特別の入学者定員枠を設けることは、多様性・開放性の観点をかえって阻害するおそれがあるため、行ってはいませんが、入試選抜における書面審査の際の評価を通じて、定員の 30%以上が社会人・他学部出身者になるよう努力しています。
 本法科大学院が受験生に期待する資質は、次の4点です。

(1) 法律実務家を志す明確な動機があること。
(2) 人間に対する暖かい眼差しと冷静な分析力を備えていること。
(3) 広い視野に立った柔軟な思考力と果敢な決断力を備えていること。
(4) 複雑化し高度化した社会に対する順応性を身につけていること。

入学者選抜の基本方針(入学要件、選抜方式、選抜基準等)

 従前の学修過程や職業経験等におけるプロセスを適切に評価できるように、法学既修者コースと法学未修者 コースとに分けて、入学試験を実施します。
 いずれの入学者であっても、本法科大学院において育成すべき法律実務家像としては、上記の教育目標を継続的に体得し続けることができ、しかも、それらを現実に実践できる者を念頭に置いています。

 そのさいには、次の5点に配慮しています。
(1)複眼的視座を基調とした法的能力の涵養
(2)実践的応用のなかでのダイナミックな体系的知識の構築
(3)法学の枠に縛られない学際的視点の注入
(4)理論と実務的経験の融合
(5)自己内発的な学修意欲の増進

 なお、選抜に関する詳細は、募集要項をご覧ください。