社会の復興に芸術で貢献

知足美加子教授
英文著者 William J. Potscavage Jr.2020/07/13動画作成者 ICER

社会の復興に芸術で貢献

知足美加子教授
英文著者 William J. Potscavage Jr.
2020/07/13
動画作成者 ICER
知足美加子
知足美加子
教授
芸術工学研究院コンテンツ・クリエーティブデザイン部門
専門分野
彫刻

知足美加子
知足美加子
教授
芸術工学研究院コンテンツ・クリエーティブデザイン部門
専門分野
彫刻
HP
DB
Pure

園を訪れる人たちがくつろぎ、四季折々の景色を楽しめる東屋。小学校の玄関では、龍の彫刻が、新たな生活を送る子どもたちを、力強く、優しい眼差しで出迎えます。山間の駅で旅人たちの出発を見届けるのは、守護童子の木彫です。

人々の心を癒し、力を与え、記憶を刻むこれらのシンボルは、もともとは住民たちの生活を奪い、痛みと苦しみを生んだ自然災害の爪痕である流木でした。復興の象徴へ意味を変えようと貢献するのは、九州大学芸術工学研究院で、木、鉄、石を使った彫刻を専門に研究する知足美加子教授です。

「芸術実践を通じて、自然災害や疫病などによる文化断絶や社会疎外、不安から生じる社会問題を解決することができます」と研究の狙いを語ります。


彫刻

知足教授が流木をのみで彫り、新たな形を作り出します。

知足教授が近年手がけているのは、2017年7月の九州北部豪雨による被害と被災者の悲しみに目を向けた作品です。この豪雨では土砂流出約1000万トン、流木約20万トンに及ぶ被害が発生しました。

釘やネジを一切使わずに組み立てられた東屋は、豪雨によって傷つけられた木が材料です。龍は豪雨によって流された木を使い、そして守護童子は、住民たちに愛されてきたにもかかわらず雨で倒れてしまった樹齢300年を超える1本のヤマザクラから作りました。

知足教授は、社会の中に寄り添う芸術を介して、自然災害によって生み出された負の感情を克服し、同時に、過去を忘れずに後世に伝えていくことを目指しています。


東屋

共同作業で建てられた東屋は、人口減少に悩む被災地において、新たな注目の的となることが期待されています。

「芸術は、心、社会、いのちなど、目に見えないイメージを形にすることで、人々の理解を促し、前を向く活力を与えるのです」と知足教授は説明します。「私は、専門である彫刻制作を通じて、祈りや愛といったみえないものに『存在』を与え、言葉では表し切れないことを見えるものにして、人々の生活をよりよくしたいと思っています」

芸術の力で社会を支える、知足教授のもう一つの取り組みは、損傷を受けた文化財の研究と復原です。知足教授は2016年、福岡県東部の県境に位置する英彦山の修験道文化に関する4つの文化財の復原を行いました。

1,000年以上前から伝わる修験道は、山の中での厳しい修行を通じて悟りを開くことを大切にしていました。山岳信仰と仏教が合わさった修験道は、神仏習合を禁じた1872年の修験道禁止令により、その多くの文化財が、人為的に破壊、または破壊されたまま遺棄されておりましたが、修験道の文化が近年では復活しつつあります。

日本三大修験山である英彦山の宗教遺物を再現するにあたっては、知足教授は現代の3Dスキャン技術を使い、限られた手がかりを元に、その構造を分析。欠けている部分については、文献を解読し、伝統的な材料と技法を取り入れました。

知足教授は修験者の子孫でもあり、今回のプロジェクトに対して、深い結びつきを持っていました。先祖とのつながりを実感することは、知足教授が研究の道に進むきっかけでもあったからです。


英彦山の修験道文化に関する文化財

英彦山でお披露目された復元後の文化財

「私は先祖の墓のそばに立つ、一本の『松』を見たときに、いのちが地に還り、木や自然といった新たないのちを生み出す循環に気づかされました。先祖が、現在を生きる私にメッセージを送ってくれたのです」と振り返ります。

「同じように、目に見えないイメージを顕在化させる力を持つ芸術を通じて、そういったつながりを次の世代へのメッセージとして届けたいと思っています。」

その実現に向け、知足教授と研究室の学生たちは、禅とメディアアート、AR(拡張現実)とパフォーマンスアートといった、デジタル技術と芸術を組み合わせる新たな表現方法を探っています。社会において芸術ができることは何か、知足教授は常に直観との出会いに心を開き、新たな創造を追い求めています。

その他のResearch Close-Upはこちら
磯辺篤彦

深刻化するマイクロプラスチックの海洋汚染問題に挑む

磯辺篤彦教授
2020/07/13
 
 
 
山下喜久

口の細菌バランスで体の健康を守る

山下喜久教授
2020/08/03
 
 
 

このページの一番上に戻るこのページの一番上に戻る