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有川総長 年頭の挨拶 「基幹教育元年の年に」(2014年1月1日)

新年おめでとうございます。

昨年は、自民党や政府、文部科学大臣、中央教育審議会等から、大学、特に国立大学に機能強化や目に見えるスピード感のある改革を求める提言や要請が、相次いでしかも具体的な形でなされた1年でした。例えば、5月の自民党・日本経済再生本部からの大学のガバナンス改革等を含んだ「中間提言」、教育再生実行会議からの「これからの大学教育等の在り方について(第三次提言)」、6月の閣議決定による日本再興戦略の中の「日本産業再興プラン」における大学改革の位置付け、また、6月には、こうした提言等を受けて、文部科学大臣による国立大学長への「今後の国立大学の機能強化に向けての考え方」の提示、11月の同じく文部科学大臣による「国立大学改革プラン」、12月の中教審大学分科会組織運営部会の「大学のガバナンス改革」に関する審議のまとめ等であります。一方、文部科学省と各大学との協議により、ミッションの再定義の作業が進行中で、既に医学、工学、理学、農学等についてまとめられ、現在、その他の分野についても作業が進められています。

こういった状況にあって、本学では、高度な教育・研究・診療活動を展開するために独自の制度改革を実行し、競争的な外部資金の獲得等、多くの面で目に見える成果を上げてきました。そのうち主なものを取り上げて、昨年の実績を振り返り、今年を展望してみます。

1.自主的・自律的な組織改革と機能強化

先ずは、「主幹教授制度」です。これは、自由な発想に基づく研究で際立った成果を上げ、それぞれの研究者コミュニティで高く評価された教授に主幹教授の称号を授与し、給与面で優遇し、研究センターを設置して研究をさらに活性化しようとするもので、こうした研究センターは既に21拠点に及びます。その多くが、有能な外国人研究者の招聘や新たな研究資金の獲得等、活発な研究活動を展開しています。この制度は、大学の自主的・自律的な機能強化を促す制度であり、新しい形の研究組織構成手法としても各方面から注目され始めています。

次に、「大学改革活性化制度」です。昨年で3年目を迎え、社会や学界からの要請に、実績のある研究組織が迅速にそれを強化し応えるための効果的な制度として定着してきました。これは、自律的・自主的にそれぞれの教育研究組織を強化・再構築するもので、審査には公平性と透明性が確保され、実績を積み計画を精錬して何度でもトライでき、一方で、頼母子講的な、あるいは互譲互助的な側面を兼ね備えた改革のためのスキームです。これも既に、国立大学法人評価委員会において「中期計画の達成に向けて特筆すべき進捗状況にある」として高く評価されています。

三つ目は、「基幹教育」です。アクティブ・ラーナーの育成を目指す「基幹教育」が、いよいよ今年4月から始まります。今年は、本学にとって、まさに「基幹教育元年」です。九州大学が百周年を迎えた平成23年に本格的な教員組織である基幹教育院を設置し、これを中核にして全学が参加して、人事やカリキュラム等、2年以上かけて周到に準備をしてきました。基幹教育においては、学生達は、授業・学習に積極的に取り組み、学び方を学び、考え方を学び、学びの背骨を鍛え、学びの姿勢を身に付けることになります。

2.競争的環境での教育・研究・診療拠点の整備拡充

法人化後、研究だけでなく、教育や診療等に要する殆どすべての経費や資金に、厳しい審査による競争原理が導入されています。本学では、昨年3月に「地域資源等を活用した産学連携による国際科学イノベーション拠点整備事業」に「多様性の持続的発展を支える共進化社会システム研究開発拠点」が採択され、建物の整備が進んでいます。また、10月には、これをハードとすれば、そのソフトあるいはコンテンツにあたる「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」に「共進化社会システム創成拠点:ヒト/モノ・エネルギー・情報のモビリティによる多様で持続的な社会の構築」が採択されました。産学官と地域が連携した極めて斬新なイノベーション創出活動の展開が始まります。

また、アジアではじめて開設された「マス・フォア・インダストリ研究所」が4月に文科省より、共同利用・共同研究拠点に認定されました。これは、数学の分野では、50年前に京都大学に設置された数理解析研究所に次いで2つ目ということになります。 さらに、8月には、「研究大学強化促進事業」が採択されました。これによって、既にいくつもの計画で顕著な成果をあげているURA活動が安定し本格的に機能することになります。

10月には、一昨年の工学、総合理工学分野に続いて、博士課程リーディングプログラム(オールラウンド型)に「持続可能な社会を拓く決断科学大学院プログラム」が採択されました。オールラウンド型ですので、すべての大学院学生に参加の機会があります。矢原教授のリーダーシップのもとで、国内外の現場での活動等を通じて、高度な専門性に裏打ちされた決断力を持ったグローバル・リーダーとしての修養を積むことができます。学習研究活動に必要な経済的支援も用意されています。こうしたリーディングプログラムに関しては、本学独自のよりコンパクトで柔軟性のあるプログラムを3本用意して、医学、数理学、地球社会統合科学の分野でもグローバル・リーダー育成に取りかかります。

大学院教育に関しては、12月に閣議決定されたように比較社会文化学府を再編した「地球社会統合科学府」計画が高い評価を得て認可され、国と大学から新たに教授・准教授5名のポストを獲得して、今年4月からスタートします。この学府は、20年にわたる比較社会文化学府における学際的な研究教育が評価されて実現するもので、「惑星としての地球、地球をふるさととする生物、そして地球の上で生きる人々の社会を学際的に、また統合的に分析し、来し方を明らかにし、現代社会の課題に応え、未来社会の構築に貢献する」ことをめざすもので、文理の枠を超えた専門性と俯瞰力を身に付けた逞しいグローバル・リーダーの育成が期待されています。

3.研究成果・実績に基づく拠点整備

主幹教授制度や大学改革活性化制度よる研究センターの他に、いくつかの際立った研究成果・実績に基づく新しい研究センター等もスタートしています。4月には、「有機光エレクトロニクス実用化開発センター」が開所しました。これは、福岡県のものですが、本学の最先端研究開発支援プログラム(FIRST)における安達教授の卓越した研究成果を生かした産学官連携による実用化研究を行い、産業界への技術の橋渡し拠点を目指すもので、本学にとっても重要な意味を持つものです。6月には、佐々木教授が先導する「次世代燃料電池産学連携研究センター」が開所しました。経産省の支援も得て整備したもので、国際的な産学連携研究の拠点としての貢献が期待されています。11月には、都甲教授の独創的な研究を飛躍的に進めるための「味覚・嗅覚センサ研究開発センター」が設置され、1月に開所式が行われます。また、病院の「ARO次世代医療センター」も中西教授のリーダーシップのもとで組織立った活発な活動を始めました。さらに、井上教授等の卓越した研究活動が結実し、「システム創薬リサーチセンター」の施設も国からの今年度の予算措置を得て整備されることになり、創薬分野の研究が加速されることが期待されています。

4.産学官連携・社会連携

9月には、百道にサテライトキャンパスとして、「産学官連携イノベーションプラザ」を開所しました。これは、建物をJSTから、土地を福岡市から無償で貸して頂き開設したもので、ここに、知的財産本部を再編・拡充改組した「産学官連携本部」が入居し、本学における産学官連携活動の支援活動を展開しています。このキャンパスは、伊都キャンパスと他のキャンパスの中間に位置するため、医工連携等、異分野との連携融合の空間として機能することも期待されています。

5.伊都キャンパスの整備

1月にカーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)研究棟の竣工式典を挙行しました。椎木正和氏からの寄付による椎木講堂の建設は順調に進み、今年3月4日に落成式を行い、3月25日の平成25年度学位記授与式をはじめとして、全学的な大きな行事をここで開催できることになります。また、4月には、大学の法人本部もここに移転します。こうして移転事業がいよいよ完成に向けて加速することになります。さらに2月には基幹教育院棟が完成し、基幹教育の中核を担う教員が集結することになります。同時に、センターゾーンとイーストゾーンを結ぶ架橋も完成し、伊都キャンパスの東西が一体化します。

東日本大震災の影響を受けて延期されていた理学系の建物は、昨年10月に着工し、平成27年央には移転できる見通しになりました。また、平成24年度補正予算で整備が進行中の国際村、ドミトリーⅢ、I2CNERの第2研究棟、共進化社会システムイノベーションセンター等も平成26年(度)には完成します。こうして、既に全体の約50%に当たる25万㎡の整備が完了し、現在整備中の11万㎡と合わせると約70%に達します。なお、平成25年度補正予算で、イーストゾーンに国際化拠点図書館(中央図書館の一部)も整備される見込みです。

6.平成26年の課題

このように九州大学では、自主的・自律的に教育・研究・診療、産学官連携、社会連携、国際活動、キャンパス整備事業等にわたる様々な課題に取り組み、単なる改革でなく難度の高い改革スキームを導入してきました。しかし、冒頭で紹介したように政府や経済界等からは、より迅速に、目に見える改革、機能強化が求められています。そうした要請や提言には、当然のことながら一貫性が見られ、特に国立大学に関しては、11月26日に発表された下村文部科学大臣からの「国立大学改革プラン」(以下、「改革プラン」という。)、あるいは、12月の国立大学学長との意見交換会での大臣の挨拶に集約されています。

改革プランでは、先ずその位置付けを行い、第二期中期目標期間を「法人化の長所を活かした改革を本格化する期間」とし、平成27年度までの残された第二期中期目標期間を「改革加速期間」と位置付け、前政権の終盤から始まっていた大学のミッションの再定義やこの改革プランを駆動させて、第三期中期目標期間では、「各大学の強み・特色を最大限に生かし、自ら改善・発展する仕組みを構築することにより持続的な競争力を持ち、高い付加価値を生み出す国立大学を目指すべきである」としています。さらに、こうした機能強化の方向性を示し、それを実現するために、各大学に「自主的・自律的」改善・発展を促し、その方策として

  1. 社会の変化に対応できる教育研究組織づくり
  2. 国際水準の教育研究の展開、積極的な留学生支援
  3. 大学発ベンチャー支援、理工系人材の戦略的育成
  4. 人事・給与システムの弾力化
  5. ガバナンス機能の強化

などを具体的な数値目標とともに掲げています。

現政権では、大学に大きな期待を寄せ、折に触れて、「大学力は国力そのものであり、大学が変わらなければ、大学だけでなく、日本も地盤沈下する」という危機感を表明しています。こうした危機感は、大学に対する期待感の表れとも取れますが、大学に政府からここまで具体的な要望等が出されるのは異例なことです。裏返して考えれば、大学は、これまで、社会の期待にあまり応えてこなかった、少なくともそういう風に見られてしまったということになるでしょう。

この改革プランでは、第二期中期目標期間の助走期間分については、既に平成26年度の概算要求に盛り込まれ、しかも、本学の取組みについては事例として取り上げられています。こういう状況を、真摯に受け止めて、早急に具体的な改革案を示し、取り組みを開始し加速する必要があります。このことが、法人としての九州大学にとっての今年最大の課題と言っていいでしょう。

ここで、注意すべきことは、改革プランでも「自主的・自律的」という言葉が使われていますが、これは、運営費交付金の配分や中期目標・計画の見直しも伴う極めて実質的な意味を持たせた言葉であり、これまで我々大学人が「学問の自由」や「自由な発想に基づく研究」といった文脈で使ってきた言葉とは、意味合いが大きく違うということです。このことは、大学のガバナンス改革に関しても同様に考えるべきでしょう。実際、中教審組織運営部会での審議のまとめでも、その冒頭で、「大学改革は、大学が学長のリーダーシップの下で、自主的・自律的に行うべきもの」としています。

しかしながら、幸いなことに、九州大学では、法人化以前から、そして、法人化後も相当なスピード感をもって、難度の高いシステム改革を大学構成員の理解を得て、自主的・自律的にいくつも実行してきました。また、改革プランでも強く求められている国際化についても、本学は、国際教養学部(仮称)の構想を全学で共有し、幾つかの部局でそれを意識した準備が自主的に進められています。また、専門性と総合性、国際感覚と俯瞰力を備えた学生の育成についても前世紀末に導入した「21世紀プログラム」において、学生の選抜も含めて際立った実績を上げてきました。G30における工学部や農学部を中心にした経験と実績があり、大学院についてはすべての学府が既に対応しています。さらに、法学部・法学府における国際人育成のための英語による学部・修士課程(LL.M)一貫教育もあります。 そして、今年は、「基幹教育」がスタートします。

このような準備や実績を基にして、グローバル社会に対応できる斬新な教育システム「国際教養学部(仮称)」を具体化する機は熟してきました。これは、改革プランにおける上記(2)の教育と留学生支援に応えるもので、研究については、主幹教授制度や大学改革活性化制度、WPIのI2CNERの理念の実現、ユニットごとの海外有力大学との連携、さらには、平成26年度概算要求に際して表明した「躍進百大実行計画」を具体化することによって実現できるでしょう。具体的には、「世界のトップ100位に10大学」という目標が掲げられていますが、これは、まさに我々が九大百年に際して宣言した「躍進百大」と軌を一にするものであります。

改革プランの中の上記(1)は、百周年に際して宣言した「目指す姿」の第一項目に掲げた「社会の課題に応える大学」そのものであり、大学改革活性化制度等は、これを先取りした形になっています。(3)については、産学官連携本部やURAといった支援部隊の整備に加えて、内閣府や各省庁の大型プロジェクトへの取り組みとその自治体や企業等への波及・展開、博士課程リーディングプログラム等、既に具体的な対応が始まっています。

(4)の人事・給与システムの弾力化については、本学のような研究大学には、教員の20%程度を年俸制度に切り替えるという極めて高い数値目標が設定されています。年俸制についての基本的な考え方、具体的な給与体系、その財源等について、早急に検討し、具体案をまとめる必要があります。(5)の大学のガバナンス改革については、昨年末にまとめられた中教審大学分科会組織運営部会の審議を踏まえて、必要な制度改正や支援を実施するとされていますが、先に述べたように、ここでも各大学は国立大学法人法等の趣旨に沿った「自主的・自律的」な改革が求められています。重要な事項は、学長のリーダーシップの確立、学長選考会議による学長選考の実質化、教授会の役割の明確化、監事の役割の強化等です。このガバナンス改革については、我々がかねてから主張している自主性・自律性・権限とそこから必然的に生じる責任について、どう折り合いをつけるのか。大学人の真価が問われることになると思います。

以上述べてきたように、大学に対する社会からの要請や期待は、内容にも時間的にも厳しいものがあります。基幹総合大学として、また、そこで働く職員として、自覚と誇りをもって、これらに的確かつ迅速に応えて行かねばなりません。「基幹教育元年」の今年、新入生の教育から始めて学部専攻教育や学府教育、高度な研究、診療等すべての面で、皆さんの創意と工夫、理解と協力、積極性と実行力でもって、直面している数々の難題を解決し、新しい道を開いて、前進していきましょう。

今年が、九州大学のすべての構成員にとって、新しい時代への躍進に向けた素晴らしい一年であることを祈念して、新年の挨拶とします。

平成26年1月1日
九州大学総長 有川 節夫

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