「九大広報」発刊に寄せて

九州大学総長  杉 岡 洋 一


 この度,九州大学広報委員会によって,従来の「大学広報」に代え,斬新な企画で広報誌「九大広報」が刊行されることになりました。
 国立大学は,応用研究とその基盤となる地道な基礎研究を土台に,学部から大学院までの教育を幅広く担当し,人材育成に貢献してきました。また,主要国立大学は,各分野での学術論文数や,研究者一人あたりの論文作成係数において常に世界の上位を占めており,高い研究成果をあげています。しかし,このような貢献度は必ずしも正当に評価されず,我が国の高等教育の根幹を揺るがすような,国立大学の民営化や独立行政法人化が提案されました。高等教育の在り方を論ずるのではなく,財政難から経済効率を主眼にした近視眼的な観点からの短絡した発想で,最も重要な基礎研究に壊滅的打撃を与える危険な提言でした。
 国立大学がこのような厳しい状態に追い込まれたのも,国立大学の社会への貢献度の説明責任,アカウンタビリティーを欠いたところに原因の一つがあり,その結果,国立大学は社会と隔絶し,安閑としていると誤解されたと考えられます。情報不足は対社会のみでなく学内にあっても言えることで,大学の管理運営,ひいては学際的研究の推進に支障を来すことにもなります。
 九州大学では創設から1世紀を経て,一層の飛躍を遂げるべく,世界における教育,研究の中核的拠点COE(センター・オブ・エクセレンス)の構築に向け,大学改革,キャンパス移転,病院キャンパスでの新病院建設を含めた再開発,筑紫キャンパスでの最先端の科学技術研究,社会連携など多くの目標を掲げ,実行しています。九州大学にとってこのような重大な時期に,新しい「九大広報」が刊行されることは,本学の現状について教職員,学生が認識を深め,かつ学外の方々にも理解していただく上で,その意義は極めて大きく,時宜を得たものと考えます。発刊を機に,世界の教育・研究拠点としての,九州大学の一層の発展を願うものです。