- 医学部附属病院再開発計画
新キャンパス計画が進む一方で,現地再開発が決まっている病院地区では,3月23日に新病院建設の起工式が行われました。キャンパス移転と並行して進む医学部附属病院再開発計画の一端を紹介します。
- 1.はじめに
- 医学部附属病院は明治36年(西暦1903年)、京都帝国大学福岡医科大学附属医院として設置されて以来、100年近くにわたり施設整備を重ね、昭和34年西病棟新営、昭和47年東病棟新営等一連の整備によって、ほぼ、現在の姿となっています。
しかし、病院施設の大部分は築後30年〜40年を経過しており、目ざましく発達する医学・医療環境の大きな変化の中にあって、施設そのものが、十分に機能しなくなってきました。
なかでも、施設の狭隘化や建物の分散化に起因して、病棟における居住環境等の質の低下並びに、外来における廊下の待合室化による混雑等、患者に多くの負担を強いる状況はその顕著なものです。
これら、現時点での多くの問題点を解消し、加えて、21世紀の新時代に向け、より高水準の先進的医療が展開できる病院を目指そうとするのが、今回の再開発計画です。
- 2.全体計画
- 全体計画は、鉄骨鉄筋コンクリート構造,地上11階地下1階,高さ56m、延べ床面積約11万8千uをV期に分け、T期〜U期工事で中央診療棟・病棟、V期工事で外来診療棟を整備する予定です。
すでに着工しているT期工事の規模は、延べ床面積約5万3千uで全病床1,346床のうちの620床を整備し、平成13年度(西暦2001年)完成の予定です。
その後U期、V期と工事をすすめ、約10年程度をかけて全体の完成を目指します。建設場所は、キャンパスのほぼ中央部です。事務棟・講堂・生協食堂等の建物は既に取り壊しが完了し、事務職員等は、旧図書館棟に仮住まいをしています。
- 3.施設計画
- ・高度先進医療への対応
- 一般に国立大学病院の建物配置は、外来診療棟・中央診療棟・病棟といった具合に、それぞれが別棟で計画されることが多いようですが、新しい九大病院は、低層部に中央診療棟、その上に病棟を載せる構成とし、高層化を図りました。
これは、「医学部附属病院再開発基本計画」(平成3年策定)の実現を念頭に置いたものであり、手術部を中核に置いて病棟と中央診療施設の各部門をタテの短い動線で結び重症患者に迅速に対応できる体制を整え、集学的医療を実践することとしたためです。
- ・患者アメニティーへの配慮
- 病棟は近年の個室化志向と、重症患者を多く抱える九大病院の特徴を考慮し、1床室を多く配置しています。
各病室については、居住環境に十分配慮し、トイレと洗面台を設置しています。
- ・防災、緊急医療への対応
- 建物は、阪神淡路大震災を教訓として、免震構造を採用しています。
基礎に高性能積層ゴムを設置することにより、地震エネルギーを吸収し従来の建物に比べ地震時の揺れを1/3〜1/5程度に抑えることができる構造です。
大規模地震時においても、継続的に病院機能の維持が図られ、地域の防災拠点病院として、期待にこたえられることとなります。完成すると日本最大の免震建物となります。
- 4.環境・省エネ対策
- ・コージェネレーションシステム
- 自家用発電システムであり、電力料金の軽減、非常時における電力確保ができると同時に、発電機から発生する排熱を有効利用することにより、省エネを図り地球温暖化防止に貢献することができます。
- ・中水設備
- トイレ洗浄水など比較的清浄度が低くてもよい用途には、雑排水並びに地下のタンクに貯めた雨水を処理して再利用する、中水設備を設置します。
福岡市は水資源に乏しい都市なので、節水効果が期待できます。
- ・氷蓄熱システム
- 夜間電力を使用して氷蓄熱するシステムであり、冷凍機の容量を小さくすることができ、昼間の消費電力の大幅な軽減や、電力需要の平準化を図ることができるため、環境に優しいシステムとして評価されています。
- 5.おわりに
- 現場では、本工事に先立って周辺道路、正門及び東門の整備がほぼ終了し、まもなく基礎工事に着手します。今後、約10年にわたり工事関係車両の出入りや交通規制などにより、病院の利用者などに迷惑をかけることになりますが、御理解と御協力をお願いします。
また、九大の建物としては過去に例がない大規模工事であり、免震工法など数々の新しい工法も採用していますので、工事の進捗状況に応じて,見学していただくことも考えています。
西暦2003年は医学部附属病院創立100周年の年です。全体の完成はもう少し先になりますが一日も早い完成が待たれるところです。
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