ミレニアム座談会
21世紀の九大を考える
アジアを向いた国際化を
古川:「九大広報」にもありましたが,九大はアジアの拠点 を目指してほしいと思います。地理的,歴史的にもその素地がある。
留学生受け入れには,宿舎不足という問題があります。たいていの 留学生は1年か2年で大学の宿舎を出なくてはならず,その後の宿舎 探しに大変苦労するし,お金の関係で悪い環境のところに住まざるを 得ない。日本へ来て日本がイヤになってしまう留学生がいるのは,住 まいで苦労することが原因の一つではないでしょうか。宿舎の整備は 緊急の課題だと思います。また,これは私の夢でしょうか,一般市民の中へ留学生を受け入れ ていただく制度は作れないでしょうか。受け入れた市民の方々の情報 交換によってシステムの質を高めていく。これは東京ではむしろ困難 で,福岡,九大でぜひ始めていただきたい。開かれた社会との交流を ベースにした留学生の受け入れ。母国のリーダーとなった彼らが福岡 を訪れたとき,再び交流の場ができるようにならないかと思います。
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杉岡:福岡では,寮などを開放してくださる企業も多く,お 考えは留学生受け入れシステムとして大変興味深い。
廣田:九大の留学生寮は日本人学生との混住ですか。
杉岡:新しいキャンパスにはそういうものを建設しようと思い ますが,今はまだです。留学生だけが住むのでなく,社会や日本人学生 と交流できることが大切だと思いますが。
古川:宿舎はデラックスである必要はないんです。
杉岡:お客さんにしてはいけない。
古川:留学生の立場で考えなくてはいけない。行政の自己満足 になってはいけません。
杉岡:とにかく九大は,その立地条件からも,東京を向くより アジアを向いていこうと思っています。
箱島:ユニバーシアードのボランティアを見て思ったのですが, 福岡は非常に開放的ですね。ヨソ者への警戒心が少ない。これは留学生 を受け入れる土壌として大変いいことだと思います。市民の中への受け 入れを組織化することは賛成です。ただ,役所の縦割りの延長にならな いようにお願いしたい。
古川:役所も段々総合化していきます。
箱島:キャンパス移転後も,市民との交流を大切にしていただ きたい。大学は静かでも,ポツンと社会から隔離された環境ではダメで す。留学生受け入れも,そういうマインドを持った家庭を,今からたく さん掘り起こさないといけないと思います。私の実家は箱崎キャンパス の近くでして,会社を終えて帰郷したら,月2回くらい留学生を呼んで ホームステイや懇親会でも開こうかなと,そういうことを夢見ています。
杉岡:周辺のまちづくりについては、自治体や経済界,企業な どから成る「九州大学学術研究都市推進協議会」で計画を練っていただ いており,社会に開かれた大学を作っていきたいと思っています。
「アジアには優秀な 人材が多くいます。そういう人材がアメリカに流れてしまうのは残念 です。」(廣田)
廣田:これからアジアとの交流はますます盛んになるでしょう。 アジアに向けた交流を九大が率先してやっていただくのはありがたい。 アジアには優秀な人材が多くいます。そういう人材がアメリカに流れて しまうのは残念です。
私は九大の筑紫地区に外部評価で行かせていただきましたが,韓国の 協定校から来た学生と九大生がお互い英語で発表し合っていて,結構だ と思いました。日本語か韓国語でやられるならもっといい。
杉岡:平成10年11月に韓国の金鍾秘国務総理が来学され,学生 に韓日の未来を託したいと日本語で講演されたときに,私が九大に韓国 館を作る構想を申し上げましたらそれが契機となって,九大を韓国研究 拠点と位置付けるための韓国国際交流財団による援助が決まりました。 今後,韓国の新聞記者に九大で研究していただいて,韓国にはこちらの 情報を持って帰っていただくという計画を持っています。
増田:このあいだ中国のある要人が来日されたとき,中国人留 学生の世話をしている日本人の方が「最近中国人学生が日本へ来ずアメ リカに流れるので,もっと日本へ来るようにしてください」と仰有った。 すると「アメリカに流れるのが中国側に問題があるなら,改善すること はできる」という答えが返ってきました。これは逆に言えば,日本に問 題があるという意味ではないでしょうか。
皆さんいろいろ努力していらっしゃると思いますが,留学で一つ重要 なことは,やはり留学先に友人ができるということでしょう。それには, どこの国の人でも対等に,普通に接すること。気持ちの触れ合いが大事 だと思います。私どもの社員を外国留学させて,何が一番のメリットだ ったかと聞くと,「友達ができたのが一番でした」と言います。留学生 の間で「九大はいいぞ」と言われるようになっていただきたい。
廣田:大学院レベルですが,共同研究している中国人を呼びた いと思った場合,アメリカでは教官の研究費に院生の奨学金に充てるこ とができるものが含まれていて,すぐに呼ぶことができる。日本ではま ず,通るかどうかわからない国費留学生に申請しなければなりません。 すぐ来いとは言えない。そういう面もございます。国際競争という点で ハンデを負ってしまう。
杉岡:日本語も含めて,日本へ来て学んだことが将来も役立つ 仕組みがあるといいと思います。日本で就職できるというような。日本 での勉強を終えたのにそれらを生かす場所がなく,アメリカに渡る人が いるのは残念なことです。
古川:先ず,本来の大学の魅力があること。勉強し研究して, 自分はここでこれを身につけて帰るんだという。それと,「九大広報」 第6号に留学生の座談会がありますが,「九大は留学生の受け入れ体 制がほかの大学に比べて整っていると思います。留学生へのケアの善し 悪しも,大学を選ぶときの基準にすべきですね。」「アパートの畳の臭 いや部屋の狭さなど慣れるのに苦労しました。」「1,2カ月は食事が 食べられず,半年で7キロ痩せました。」などいろいろあるわけです。 さきほども申しましたように,交流や情報交換によって,いろいろなこ とがかなり急速に改善できるのではないかと思います。
杉岡:帰国してからのフォローも大切です。再度来日するとき の旅費を支給するなどのことも考えていいと思います。
「日本人の中には,ア ジアの人々にある種の優越感を持って接する人がいます。」(増田)
増田:「日本に留学してよかったなあ,日本がなつかしいなあ」 ならうれしいのですが,反日感情を抱いて帰られたのではいけません。日 本人の中には,アジアの人々にある種の優越感を持って接する人がいます が,これは反日感情につながります。そういうことのない福岡であってほ しいと思います。
杉岡:韓国には在韓国九大総同窓会という,九大に留学した方々 の同窓会があります。そういうところにも,大学の情報をどんどん出して 行かなければならないと思っています。
増田:「九大広報」は,どこにどれくらい配られているのですか。
箱島:ホームページもありますね。
杉岡:「九大広報」は,学内の教職員や学生,学外では周辺の市 民,自治体,九州山口の主な企業,高校などにお配りしています。いま全 国的な同窓会の組織を作っており,学部を超えた同窓会や,本日御出席い ただいた皆様のような,各界で御活躍のOBの方々にもお送りしたいと思っ ております。
増田:こういうものは,ぜひ広く配っていただきたいと思います。