年頭の御挨拶


九州大学総長 杉 岡 洋 一

杉岡総長  西暦2000年の年明けおめでとうございます。
 全学の努力により,平成7年に策定した「改革の大綱案」の骨格は,これまでに 全て実現されました。すなわち,COE(Center of Excellence:国際的・先端的な 研究教育拠点)構築への基盤は整い,本年は独自の研究院制度を擁した大学院大学と して,世界と競うべく具体的行動に出る年と位置付けられます。それは従来の学問 を発展させ且つ学際的新研究分野を拓くのと同時に,本学の過去の実績を踏まえた 新しい幾つかの学問領域を立て,全学の支援のもとに叡知を集め,九州大学の21世 紀におけるアイデンティティーを確立することだと考えます。その一つとして,本 年「韓国研究センター」が開設されることもあり,過去から現在にかけての本学の 実績に鑑みて,「アジア研究の拠点形成」が挙げられます。

 確かに今日,国立大学は逆風の中にあります。しかしこれは大学自身がその存在 意義と貢献度を国民に認識させ得なかった,またその努力を怠った報いと言えまし ょう。この逆風は,大学の自画自賛と驕りの体質に冷水を浴びせ,危機感を高めた 点で意義があったと言わねばなりません。それが今後の発展へのスプリングボード の役割を担えば,この危機を好機と捉えたことになります。

 本学はこの逆風,独法化論議(国立大学の独立行政法人化に関する論議)などと は無関係に改革に取り組み,実行してきたわけで,この点他大学より数歩先んじた と言ってよいでしょう。新キャンパスも新病院もCOE構築の一つの手段であり,そ の完成前にそれにふさわしい教育・研究の実績を高め,アイデンティティーを確立 しておかねばなりません。他の追随を許さぬ飛躍に向けて,各学府,学部間の協調 と,よい意味での競い合いや切磋琢磨に,迸(ほとばし)る学問への熱い想いを燃 やそうではありませんか。