ニューカッスルアポンタイン大学(イギリス)


Northumbriaとニューカッスルアポンタイン
農学部教授 石 崎 文 彬

 ニューカッスルアポンタイン市は英国中央部Northumbria地方の中心都市で,人口は約30万弱,周辺部を入れても50万人の閑静な町である。町の東約15kmはオランダ対岸の大西洋に流れるタイン川の河口で,北海の厳しい寒風のなかに古城がそびえる景勝地である。先端の岬はローマ時代から大西洋を航海する船の安全を守る見張りがおかれた交通の要所であり,バイキング達の侵入を防ぐ防衛の拠点でもあった。また,この地はScotlandとEnglandの長い戦の前線でもあったため,中世の城と館が多く残されており,訪れる人々がたえない。

 ニューカッスルアポンタインへはロンドンのキングスクロス駅からエジンバラ方面に向かうインターシティ(特急列車)で約4時間の列車の旅か,日本からはオランダのアムステルダムからわずか半時間の飛行機の旅か,のどちらかである。Northumbria地方は良質な石炭の産地としても有名で,列車の車窓から,露天掘りの炭坑や近代的な石炭の発電所が牛や羊の群の間に点在する光景が見られる。古都デュルム(Durham)の古城を楽しんでしばらくすると列車はタイン川にかかる大きな鉄橋をわたり,ニューカッスル駅にすべりこむ。この駅から北はもはやEngland ではなく誇り高いScotlandの地であり,列車もBritish Rail からScotish Railと名前を変える。

 ニューカッスルアポンタイン大学は駅から地下鉄に乗り換えて2つ目のハイマーケット(Haymarket)駅でおりる。階段を上ると大学本部の建物が目に飛び込む。反対側には市役所(The Civic Center)がそびえる市の中心部である。ヨーロッパによくある田園の中の大学と異なり都心の大学である。しかし,大学の裏には牛を放牧する牧場と草地が広がり,いかにもイングランドらしい田園風景である。大学は九大に非常によく似た発展の歴史を持つ。すなわち,この大学は古都デュルムのデュルム大学分校の医学校として1832年に発足した。1963年総合大学として改組され今日に至っている。現在,医学,歯学,理学,工学,農学・生物科学,芸術学,社会・環境科学,法学,教育学,の各学部およびこれらの大学院研究科からなる。また留学生の英語教育を目的にしたLanguage Centerや日本学を含む東アジアセンター(Newcastle East Asia Center)を併設している。

 ニューカッスルアポンタイン大学は欧米の大学としては数少ない農学の名前の入った学部を持つ大学である。農学・生物科学部は,農業経済・食品流通学,農業環境科学,農学,生化学・栄養化学,海洋水産学の諸学科に2つの農場(圃場および牧場)と北海に面したTyne Mouthに水産研究所を持つ。農業工学科は工学部に所属する。

 九大との交流は高橋良平元総長の提唱で始まり、1992年5月マーチソン副学長補佐一行が来学し,農学部との部局間交流締結交渉が開始され、1993年6月21日協定締結に至った。本年協定締結後5年間を経過したので5月13日さらに5年間の延長に合意し現在に至っている。


(筆者紹介)
 石崎文彬教授は農学部食糧化学工学科微生物工学講座担当教授。専門は発酵工学。農学部国際交流委員長(平成5年〜平成7年)として,九大農学部とニューカッスルアポンタイン大学農学・生物科学部との部局間学術交流協定締結を推進した。