大学改革〜改革の進捗状況〜
組織再編:『大学院人間環境学研究科』
大学院人間環境学研究科長 大 野 博 之
- 1.はじめに
- 21世紀を目前にした現在,九州大学は,新時代にふさわしいキャンパス構想について精力的な検討を行うとともに,全学的視点から,研究・教育体制の抜本的見直しを行い,平成7年に研究拠点大学を目指した改革の大綱案を取りまとめました。平成10年4月に新設が認められた『大学院人間環境学研究科』は,その主要な成果の1つであり,これまでにない特色を持ち,全国でも例のない組織再編として各方面の注目を集めています。
- 2.新研究科の設立趣旨と概要
- 国際化や情報化の進展とともに,人間と環境をめぐる問題は,地球規模で深刻さの度合いを増しています。そうした状況に対処するためには,技術と人間,空間と行動,教育と成長,心理と組織,健康と環境などの諸側面で,「人間」と「環境」を分離して捉えるのではなく,「人間環境」という形で一体的にとらえ,両者のよりよい共生の在り方を探り,解決を図ることが人類にとって必要不可欠な課題となっています。
文学部人間科学科,教育学部,工学部建築学科及び健康科学センターとの共同により,心理学,社会学,教育学,健康科学,建築学の諸分野を結集して,それらを有機的に再編・統合し,文理融合型の新しい学際的学問分野を開発・創造することで,社会の要請にこたえようとするものであります。
本研究科は,こうした社会背景や理念のもとに,アーバンデザイン学及び都市災害管理学の2大講座からなる「都市共生デザイン」,共生社会システム学,心理臨床学及び臨床心理相談学の3大講座からなる「人間共生システム」,心理学及び健康行動学の2大講座からなる「行動システム」,教育社会計画学,国際教育環境学及び社会学の3大講座からなる「発達・社会システム」,及び建築計画学,建築環境学及び建築構造学の3大講座からなる「空間システム」の5専攻,13大講座で構成しています。新研究科の学生定員は,修士課程95人,博士後期課程44人であり,指導にあたる教官は,基幹講座所属69人及び協力講座所属16人の計85人であり,多岐・多彩な人材をそろえてます。
- 3.教育研究上の特色
- 本研究科では,学際性の高い教育研究を推進するとともに,徹底したフィールドワークや異分野の共同作業(コラボレーション)を通して新時代の「人間環境社会」を創造・リードする高度な職業人や研究者となる人材を養成することを課題としています。例えば,人間環境の諸領域において,都市問題の分析・評価,適切な解決策・方法の企画立案,創造等に携わるリーダー的資質を備えた人材をはじめ,都市災害管理部門における総括責任者,教育,心理臨床(臨床心理士),福祉,健康管理などの領域において適切な援助システムを開発・実践できる高度職業人などを養成することに力を注いでいます。
全専攻において,社会人や留学生を含め,様々な分野からの幅広い学生の受入れを行っています。
- 4.組織再編の経緯
- 平成6年10〜12月に提案した再編案は,″ガラス細工のような計画″と批判されたように,ある意味では,非現実的な夢物語にすぎなかったのかも知れません。しかし,改革に情熱を注ぐ教官団の集中的かつ継続的作業の結果,新しい理念とそれを実現するための教育研究組織を持つ『大学院人間環境学研究科』案を平成8年度概算要求として文部省に提出できました。この間,大学内における学部や小講座の壁を克服するために相当のエネルギーを費やすとともに,強力な協力体制を構築するために,関係部局がお互いに血を流すことを当然のこととして覚悟しました。平成9年には,組織再編における同数同格の原則に基づいて,どのような事態にも対応できるように体制を整え,文部省大学課や専門教育課,学生課等との折衝を続けました。その結果,本部や関係部局,委員会,ワーキング・グループ,教官,事務官など多数の関係者の努力が実り,ついに 平成9年12月に『大学院人間環境学研究科』の平成10年度概算要求に関する大蔵省の内示を受けました。以上のように,新研究科実現のための道程は思いの外,過酷で厳しいものがありました。しかし,それ以上に大切なことは,新研究科成立後の教育研究の在り方であります。
幸いなことに,新研究科の一員としてのアイデンティティーを持つ学生や教職員の結束が固く,必ず社会の要請に応えられるものと確信しています。