夢に挑戦する 〜チャレンジ&クリエイションプロジェクト〜

 九州大学の新しい試みとして,学生・大学院生の斬新なアイデア,研究課題を支援する制度”チャレンジ&クリエイションプロジェクト”が平成9年度に設けられました。
 時代環境の大きな変化を前に,キャンパスから新しい風や文化をいかに起こしていくかが大学全体の課題となっている中で,ややもすれば閉塞的な状況に陥りがちなキャンパスに一石を投ずべくスタートした本プロジェクト。
 全学事業として,学生・大学院生自らがユニークな研究・調査プロジェクトを企画し,自分で考える面白さと創造性発揮の喜びを実感できるような機会を提供する,このチャレンジ&クリエイションプロジェクトについて紹介します。


ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー次長
工学部助教授 坂 口 光 一

はじめに

 「キャンパス楽園化計画」「ソーラーカーに関する研究」…。このほど採択がきまった「九州大学チャレンジ&クリエイション(C&C)プロジェクト'98」のプロジェクトの名称です。と言っても,「チャレンジ&クリエイションプロジェクトなんて,初耳だ」という人も多いのではないでしょうか。この「C&Cプロジェクト」は,ベンチャービジネスラボラトリー(VBL)が事務局となって,昨年度から総長特別経費の助成を受けた全学事業として実施しているものです。

C&Cプロジェクトとは

 C&Cプロジェクトの狙いは,@起業家精神や挑戦意欲の横溢する新たなキャンパス文化をつくりだす,Aそのために自分の頭で考える面白さと創造性発揮の喜びを実感する機会を提供していく,の2点にあります。ご承知のように日本社会は今,閉塞感を強めていますが,こんな時こそ,若者らしいみずみずしい発想でものごとにチャレンジしていくことが求められるのではないでしょうか。一般社会と較べると大学は,自由な発想を展開していく環境と時間が与えられています。それだけに,新しい価値の創造(クリエイション)と社会変革(イノベーション)を先導していく拠点としての役割が強く期待されているのです。C&Cプロジェクトは,そうした期待にこたえていくためのささやかなトライアルです。

現在の実施状況

 1998年度は,九州大学の院生・学生で構成されるプロジェクトであることを条件に,「自由研究」「起業研究」「課題研究」の3タイプに区分して研究・開発プロジェクトを公募しました。起業研究は,「あなたのアイデアや技術を事業化・商品化していくためのプロトタイプ研究や事業化可能性調査について助成します」ということで応募を募りました。また,課題研究としては,「九州大学資源リサイクル計画」「インターネットの新しい活用法」「キャンパスライフ21の設計」という3つのテーマについて,研究計画を募りました。

 昨年同様,今年も24件の応募が寄せられました。そして,全てのプロジェクト提案を対象に,7月2日に杉岡総長を審査委員長とする総勢9名の審査委員会において,1件あたり10分前後の発表・質疑という形で審査を行いました。審査にあたっては審査委員が各プロジェクトを「研究内容」「研究方法」「研究実行力」の3項目について5段階評価を行い,総合点として集計し,それに基づいて採択プロジェクトを決定しました。

 審査の結果,自由研究4件,起業研究2件,課題研究2件の計8件を本年度助成プロジェクトとして採択することを決定しました(別表参照)。結果として,多様なプロジェクトが採択されました。例えば,「ソーラーカーに関する研究」では,ソーラーカーを製作し,全国大会への出場を計画しています。

 また,「九州大学資源リサイクル計画」では,学内の紙,ビン,備品などの排出状況を調査し,九大独自の資源リサイクルシステムとして提案を行い,実施の方策を探っていきます。

 こうした助成プロジェクトに対しては,1件あたり50万円を上限に研究助成がなされます。そして,事業化・商品化につながりそう研究成果については,行政など外部機関とも連携しながら多面的なサポートを行います。さらに,最終報告会において優れた研究成果であると認定されたプロジェクトに対しては総長賞が授与される予定です。

 本プロジェクトの推進にあたっては,岡崎篤名誉教授(元理学部長)にアドバイザーをお願いするとともに,各プロジェクトごとに顧問を委嘱して,相談や助言にあたっていただくことになっています。また,VBL3階の一室にはC&C専用の研究・交流コーナーを整備しています。

おわりに

 「自分の発想・アイデアをふくらませてみよう」「他の人間と異なることに挑戦してみよう」という積極的なムードが,キャンパスからどんどん広がり,九州大学の活性化につながっていくことを大いに期待しています。あなた(あなたちも)来年は,ぜひチャレンジしてみませんか。


写真の説明

(写真1)ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーにはC&C専用研究コーナーも設けられている。
(写真2)ラリーにも出場したソーラーカーと研究グループ”ザ・フューエルズ”のメンバー