講 演 要 旨


九州大学と九州訪問について
 九州大学は開学以来アジアとの交流を重視して多くの留学生を受け入れ,アジア地域研究に大きく寄与してきました。九州は先史以来韓半島から渡ってくる渡来人たちが大陸文化を伝える窓口であり,日本が韓半島と大陸に向かって交流する出発点でもありました。
 韓半島を含むアジア大陸と日本をつなぐ九州の役割は,過去のみならず今日においても継続されていると思います。

 

韓日関係についての基本知識
 よく韓日両国を「近くて遠い国」といいますが,このような表現は歴史の特定時期だけを考えた狭い視角から出てくるものというほかありません。われわれ両国は1500年を越える長い歴史の中で「近くて近い国」として過ごしてきました。両国の仲が不幸だった時期は16世紀末,豊臣秀吉による朝鮮侵攻7年間と,20世紀前半の帝国主義時代の36年間でした。これらの時期は両国関係においてごく例外的な時期でした。
 われわれ両国はいつまでも過去にこだわっていることはできません。両国関係をさらにいっそう未来志向的に発展させ,両国民がともに手を取り「近くて遠い隣人」ではなく「近くて近い隣人」を作らなければならないと思います。

 

21世紀の到来と共存共栄の必然性
 地球上の国々は,相互補完と相互協力でなければ存立できないようになりつつあります。今や韓日両国も国家と国益だけの概念を超越し,われわれすべての協力と繁栄,そして平和を考えなければなりません。
 もし日本の努力によってアジア通貨基金,AMFが創設されて域内の危機に対処し,さらにそれが解決されるようになれば,多くの利益が日本にもたらされるでしょう。またそうすることで日本経済が豊かになれば,その波及効果はアジア周辺国家からさらに世界全域に拡大されることでしょう。
 日本は今やリーダーにならなければなりません。

 

新しく追求されるべき価値,よみがえらせるべき価値
 日本の知識人の皆さん。21世紀を前にした今,われわれが新しい韓日関係を模索するためには,その出発点は韓日両国の文化的接点を発見することでなければなりません。今やわれわれは両国文化の異質性を探すことより,普遍的なものが何かを求めなければなりません。21世紀を迎え今や韓国と日本は,世界人が共感しうるビジョンを共に提示していかなければなりません。
 とくに21世紀の門を開く地球村のスポーツ祭典,2002ワールドカップ・サッカー大会を両国がいかにうまく開催するかということは,世界人に国家間協力の新しい可能性を示す一つの象徴になるでしょう。私はまた,日本国の元首である天皇が2000年までに韓国を訪問できるようになることを願っております。韓日間の将来を妨げている問題は20世紀のうちに解決してしまい,両国が21世紀を新しく開いていくことを期待するからであります。

 

韓日両国の若者たちへ
 日本の若い皆さん,そして韓国の若い皆さん。これからやってくる時代は皆さんの時代です。皆さんより以前の世代が誤って作ってしまったすべての束縛や誤解や反目から抜けだし,新しい世界で心ゆくまではばたくことを願っております。21世紀の無限の可能性を持った両国の若い皆さんはその遠大な夢を心ゆくまで広げ,皆さんが主人公になる21世紀を希望と生きがいの世紀にしてください。そして平和と協力と繁栄の新しい千年の歴史を書いていかれることを,心から願っております。


講演要旨全文