わが国における英語学研究文献書誌
1900−1996
田 島 松 二 編著
どの分野の研究であれ,問題の所在を的確に知り,研究上の重複や無駄を省くためにも,過去の業績を正確に記録した書誌は研究にたずさわる者がまず参照すべき基礎資料である。
わが国に外国語としての英語が入ってきたのは幕末である。その幕末から明治中期までの英語の研究は,研究それ自体を目的としたものではなくて,英語の学習という実用的目的のためのものであった。英語の体系的,科学的な研究,すなわち英語学の研究がわが国で始まったのは明治時代末期の1900年ごろのことである。以来,すぐれた成果も数多く発表されているが,わが国にはそれらを記録した本格的,網羅的な書誌は皆無であった。
本書は,その1900年から今日までの約100年間にわが国で刊行されたすべての英語学研究のうち,実物を確認できた11,276点の文献を,分野別,著訳者別に分類し,それぞれに詳細な書誌学的な情報を付して,収録したものである。さらに,わが国における英語学研究の歴史を綴った100頁近い「序説」も付している。本書は研究者にとって研究上の百科事典的役割を果たすものであり,本書を見れば,各分野の研究状況が過去現在にわたって一目瞭然である。
8人がかりで完成まで4年かかったことになるが,筆者や若い共編者たちがこの仕事から得たものは計り知れない。その黎明期から今日まで,わが国の英語学研究がたどった一世紀になんなんとする足跡を曲がりなりにも記録できたことに今は多少の感慨を覚えている。
共編者の家入葉子(神戸市外国語大学助教授),宮原一成(山口大学助教授),大和高行(鹿児島大学助教授),松元浩一(長崎大学講師),原口行雄(熊本学園大学助教授),野仲響子(九州情報大学講師),末松信子(比較社会文化研究科博士課程・日本学術振興会特別研究員)といった面々はすべて本学の卒業生であり,かつて筆者の英語学,社会言語学関係の授業に参加した若手研究者ばかりである。特記して労をねぎらいたいと思う。
(南雲堂,1998年11月刊,1,216頁)
(たじま まつじ 言語文化部教授)