TRANSPORT AND STRUCTURAL FORMATION IN PLASMAS
K Itoh, S-I Itoh and A Fukuyama 共著
本書は,磁気閉じ込めプラズマにおける乱流と輸送現象をプラズマの非均質性に力点をおいて議論したモノグラムであり,なぜプラズマの非均質性が輸送を支配するオーダーパラメータとなりうるのか?どのようにして自己維持された揺動が亜臨界励起によって駆動されうるのか?を解説している。さらに著者らは非線形の勾配−フラックス関係式を導出し,揺動から生じる非対称性がさまざまな種類のフラックスの混合を許すことを示している。高温プラズマにおける輸送現象は非線形非平衡系のひとつの典型例であるといえよう。
簡単に内容を紹介すると大きく分けて二つのトッピクスが扱われている。一つめは自己維持乱流に関するもので,二つめは電場によるプラズマの構造形成と遷移現象である。まず導入として高温プラズマにおける輸送理論(新古典理論,異常輸送理論)を解説している。従来の異常輸送理論が線形不安定性に基づいていることを説明し,その後,著者らの非線形不安定性に基づく自己維持乱流理論が解説されている。またプラズマ中では輸送によって記述できる時間スケールよりも速い時間スケールの現象も観測されており,それらは一種の遷移現象として解釈できる。後半では電場における遷移モデルが提出され,速い時間スケールでおこる現象が説明される。このモノグラムはプラズマ物理において新しいものの見方を提出するものといえよう。ただし,プラズマの輸送理論の予備知識のない学生がいきなり読むには少し難しいかもしれない。興味のある方はhttp://bookmark.iop.org/にアクセスされるとよい。
(Institute of Physics Publishing, Bristol and Philadelphia 1999年刊,307頁)
文責:矢木 雅俊(やぎ まさとし 応用力学研究所助教授)