注意のスポットライト機能測定装置の開発

大 上  渉


 「注意を集める」,「関心をひく」という表現を我々は日常使っているが,どの程度注意を集めているのか,それはどのくらいの時間持続するのかを客観的に調べる方法はまだ確立されていない。
 そこで,我々のプロジェクトでは人間の注意範囲を測定するためのプログラム(MacOS対応)を作成することにした。近年の認知科学領域における研究知見から人間は関心をもつ対象や情動的な対象に対しては,スポットライトがあたるように注意の範囲を縮小することが分かってきている。注意の範囲が縮小した状態では,その範囲外に存在するものは認知されない。

 今回作成したプログラムはパソコン画面中央に注意の変化を引き起こすビデオ映像を再生し,画面の中心から一定の距離離れた位置にターゲット(数字)を呈示し,その出現に気付くかどうかを調べるものである。注意範囲の境界はターゲット検出が可能な位置と不可能な位置の間にあると考えられる。このプログラムを利用し,殺傷場面が描かれたビデオ観察中の注意範囲を測定したところ,画面の中心から8゜以上の位置にターゲットが呈示されると検出が困難になることが分かった。この結果から情動は注意範囲を縮小させることが明らかになった。

 このプログラムは,工業製品のデザインに対する評価,さらに人間の認知処理能力を考慮した製品の設計などに重要なデータを提供すると考えられる。

(おおうえ わたる)


 文学研究科心理学専攻を修了し,4月から佐賀県警科学捜査研究所研究員 北九州市出身