比較社会文化研究科長 嶌    洪


 先生のご専門は,生物学,とくに動物系統分類学です。具体的には,応用上重要な天敵昆虫の代表であるヤドリバエ科(主に他の昆虫に寄生するハエ類の仲間)の系統分類学・生物地理学を研究テーマとされ,この分野の世界的権威者の一人です。

 害虫防除のために農薬を使わない天敵の利用はこれからますます重要になってきますが,そのためには,これらの分類学的研究がきわめて重要です。なぜなら外見上同じように見えても別種であることがしばしばあり,種が異なればその寄主や生活史が異なり,天敵利用の方法も異なってくるからです。先生のもとには内外の研究者から毎日のように同上の依頼があり,その対応に忙しくされています。また,ヤドリバエの研究以外に,先生にはサイドワークとしてチョウ類の研究業績も少なくありません。これらの研究には,研究材料の収集,生活史の野外調査が不可欠です。そのため,先生はネパールをはじめ,中国,東南アジア各国,パプアニューギニア,南太平洋の広範な地域でのフィールドワークを行ってこられました。一方,学会活動もめざましく,日本昆虫学会の評議員,編集委員会編集長を歴任する一方,国際双翅学会の日本の世話役もつとめられています。

 これらの経歴からも伺えますように,先生は研究,仕事など何事にもきわめて積極的で,迅速かつ的確,今日の仕事は明日には残さないタイプの人です。学内では,組合の委員長や書記長をいく度となく務められ,多くの教職員から頼られる存在であることは周知のとおりです。また,酒を愛する先生は,学生や周囲の人々との心のふれあいを大切にされ,飲むほどに「しま節」が冴えてきます。物事への理解が速く,責任感が強く,しかも人情に厚い先生は,これからの大学院比較社会文化研究科の円滑な運営と充実発展に大きな貢献をなさることでしょう。 (O.Y)