機能物質科学研究所長 持 田   勲


 先生の専門は触媒化学,炭素科学,石炭科学,石油化学,環境化学でありますが,最近は環境浄化触媒,ピッチ系高性能炭素繊維および炭素材料,新規石炭液化触媒,石油精製触媒ならびにプロセス開発,リチウム電池電極など産業界の関心の高い課題に積極的に挑戦し,実用化に至る成果をあげられています。

 機能物質科学研究所素子開発部門教授として高機能材料の研究に邁進されておられると同時に,大学院総合理工学研究科量子プロセス理工学専攻の教授として大学院生,社会人学生,留学生の指導も担当され,多数の人材を育成しておられます。最近の主な研究成果として,高性能炭素繊維の原料となる液晶ピッチの新規合成法を開発し,工業化に成功されました。この液晶ピッチは間もなく世界中のピッチ系炭素繊維,高性能炭素材の主要な原料となると予想されています。

 また,活性炭素繊維を用いるSOx,NOxの室温完全除去法を見出し,日米中韓あるいは日米の国際共同研究を進める一方で,実用化を推進されています。また日本化学会進歩賞を皮切りに7件の国内の学会賞の受賞に加えて,アメリカ炭素学会C.E.Pettinos賞,アメリカ化学会H.Storch賞および燃料部会R.A.Glenn賞も授与されています。現在,機能物質科学研究所も改組後12年を経て,新たな飛躍の時期が迫っています。大学あるいは附置研究所に大きな期待がかけられて,それにこたえる使命が要求されています。所長に再任された先生の企画推進力,包容力,的確状況判断力をもって研究所の発展に全力をあげて推進してくださることを確信しています。 (Y.K)