歯学部附属病院長 古 賀 敏比古
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古賀教授はう蝕および歯周疾患の病因論に基づいた予防法の確立を目指し,細菌学ならびに免疫学的な側面から数々の斬新な研究を進めておられ,その成果は世界中の研究者の注目を集めている。特に,国立衛生研究所時代から取り組んでこられたう蝕ワクチンの開発では国際的な評価も高い。また,米国微生物学会のCore JournalであるInfection and ImmunityのEditorial Boardも務めておられ,お忙しい職務の合間を縫うようにして,毎週何編もの論文の査読を精力的にこなされている。しかしながら,古賀教授の才能はこのような卓越した研究能力に止まらない。
古賀教授は九州大学歯学部の1期生であり,学生時代には本学部の創生期を目の当たりにされている。その後,新設されたばかりの鹿児島大学歯学部では,助教授として責任の重い立場から歯学部の立ち上げに奔走されており,ものを生み出す苦しみは肌で感じ取ってこられた。昨今ではリストラという言葉が飛び交っているが,真の意味の再編というよりも,むしろ前段階での既存体系の破壊があまりにクローズアップされるきらいがある。リストラの真価は,その後の新たな体系の創造にあるはずであり,赤字部門の切り捨てなどに象徴されるマイナス思考では,現代社会が抱えている閉塞状況から抜け出すことは難しい。古賀教授の視線の先には絶えず創造が見据えられており,創造なき破壊の無意味さをいつも教室員の皆に熱く語っておられる。
7年前に教授として国立衛生研究所(現在の国立感染研究所)から九州大学に戻られて以来,その前向きな創造志向とバイタリティーで予防歯科学講座の再生に努めてこれられた。今回の病院長への抜擢は,その成果が十分に評価された結果と思われる。今後,歯学部附属病院の長として真の意味の改革に果敢に取り組まれるであろうが,その成功は周囲の協力なくしてはあり得ない。皆様の理解あるご支援を切にお願いしたい。 (Y.Y)