医学部が目指すもの

医学部長 杉 町 圭 藏


 医学部は明治36年(1903年)に創立以来,西日本地区における医療センターとしての役目を果たし,高度先端医療を供給し,また,生涯教育にも貢献してきましたが,平成15年(2003年)には創立100周年を迎えることになります。平成11年春の卒業者を加えると,この間,10,331人の卒業生を社会に送り出しており,医療に関係する多くの分野で医師として,あるいは研究者として活躍されています。

 平成9年から3年計画で進められた大学院の重点化が平成11年4月でいよいよ完成し,大学院学生の教育・研究により力を入れる大学へと変身し,今,まさに21世紀に向けて大きな情熱,エネルギーが満ち満ちています。また,一方では古くなった附属病院を先端医療を行うにふさわしい病院にすべく,全面的な開発が平成10年から始まっており,現在では鉄骨による骨組みが次第に姿を現しており,今,九州大学医学部は大きな変革と飛躍をとげようとしています。

新病院完成予想図

 しかし,また,一方では,国家公務員の消滅,大学のエージェンシー化,医師過剰という話も耳に入ってきており,これから大学は冬の時代がやってくるのではないかと心配しています。

 本学部が,医学教育・研究・診療のレベルを高く維持し,世界に冠たる学問の府として更に発展をとげるためには,社会の広い理解と支援を得ながら,研究者個々の持ち味を生かし,研究の質を高めるための種々の環境を整えることが肝要であります。

 本学部では,昭和56年から欧文で発表されたすべての業績を集めて「Collected Papers」を編集,公表し,情報の公開をしていますが,平成5年には自己点検による「九州大学医学部の現況」を刊行し,さらに,外部評価委員により,本学部における医学教育・研究・診療について,客観的な立場から評価を受け,平成11年3月には「外部評価報告書」を刊行いたしました。

 大きな組織の中にいるとややもすると閉鎖的になりがちであるが,情報公開が叫ばれている今日において,大学自らが社会のニーズに積極的にこたえることが重要であると考えています。

 さて,九大医学部が21世紀において目指しているものは,とりもなおさず重点化が完成し,新しい研究システムで研究環境を向上させ,研究の面で世界へのすばらしい発信基地となることであり,今,正に未来に向けて大きく羽ばたこうとしています。

 個々の優れた研究を積み重ねるということは当然ですが,さらに,九州大学が総合大学であるこの良さを発揮し,大型の総合研究も活発に行われることを願っています。

 また,九州大学は東南アジアに,最も近いという地の利を生かして,アジア諸国との交流を深め,医療後進国への援助・指導にも力を入れたいものであります。

(すぎまち けいぞう)