応用力学研究所の改革

応用力学研究所長
高 橋   清


研究所の改組

改革後の応用力学研究所の3大部門と2研究センター  昭和26年に“流体及び弾性体に関する工学の学理及びその応用の研究”を目的として4小部門(講座に対応)で発足した応用力学研究所は,“力学に関する学理及びその応用の研究”を新しい設置目的として平成9年4月に改組され,同時に全国共同利用研究所となりました。教授の定数は常勤が21,客員が2となっております。

 改組後の研究所は図のように「基礎力学」,「海洋大気力学」,「プラズマ・材料力学」の3大部門と2研究センターからなっています。かつて研究所附属施設であった津屋崎海洋災害実験所を廃して,かわりに力学シミュレーション研究センターを設置するとともに,その設置目的を海洋関連に限定せずに,研究所全体に関係するものとしました。しかし,当面は海洋関係の研究にその軸足を置くこととしています。また,同じく附属施設であった強磁場プラズマ・材料実験施設を炉心理工学研究センターに拡充改組しました。

 大部門は,学問発展の趨勢に応じて改廃が自由にできるいくつかの「研究分野」からなっています。3大部門のうちの二つは,それぞれ海洋大気とプラズマ・材料関連に特化しております。残る基礎力学は力学応用のなかの基礎的な領域で先端的,先導的な研究を行うこと,さらには新しいプロジェクト研究の芽を育てることが期待されております。

研究所の理念

 大学附置研究所のアイデンティティが問われる昨今ですが,応用力学研究所は,大型プロジェクト研究,全国共同利用研究,ユニークな個別研究,大学院教育などを通じて附置研としての役割を果たそうとしています。

 よく知られております大型プロジェクト研究に超電導利用トカマクプラズマの研究があります。このプロジェクトは高温プラズマの超長時間生成などで多くの成果をあげております。他方,プラズマ理論,材料照射損傷の研究グループも所内でこのプロジェクトと密接な共同研究体制を持っております。また,他の大型プロジェクト研究に海洋に関する研究があります。最近の例としては日本海の表層,深層の動態研究がありますが,これは研究所主導の国際共同研究として実施され,内外に反響を呼ぶ成果が得られております。上述のような大型プロジェクト研究において,研究所は国際的な研究ネットワークのリード役を果しております。

 全国共同利用研究は,他の研究機関(あるいは九大内)の研究者と研究所の所員とが研究所の設備を用いて行う「共同研究」と,力学の応用に関連したユニークなテーマのもとに専門家を集めて行う「研究集会」とに大別されます。平成11年度の実績では前者が41件,後者が12件となっております。

 教育面では,研究所の教官はその大半が大学院総合理工学研究科に,また一部が工学研究科にそれぞれ協力講座として参加しております。前者の先端エネルギー理工学専攻,大気海洋環境システム学専攻では,講座数のうえで中心的な存在として大学院学生の教育にあたっております。

今後の方針

力学シミュレーションセンター棟を増築中の応用力学研究所(右側は現在の研究棟)  改組後まだ日が浅い応用力学研究所は,当分は,現在の基本的なスタンスを維持しながら,内容を一層充実する方向で努力していく方針です。

 平成10年度の後半に,外国人3名を含む13名の評価委員に改組後1年の研究所の外部評価をしていただきました。その結果についてはすでに公表ずみですが,研究所の現状と今後の方針について全般としては大変肯定的な評価を得ております。また一方,示唆に富む提言もいろいろといただいております。部門間の共同研究の充実や,競争的な外部研究資金の一層の獲得努力などがその例であります。研究所では目下これら提言に対応するアクションプランを策定中で,それが決まり次第これを公表するとともに,順次実行に移していくこととしております。

(たかはし きよし)