歯学部における国際連携活動


写真1:盛会だったシンポジウム  歯学部では日頃から留学生の受け入れ,交流協定締結校との学術交流,開発途上国における医療協力と調査活動など,国際連携については積極的な対応を行っている。

 平成11年7月23日〜25日の3日間にわたっては,福岡県歯科医師会館において「歯科保健向上に寄与する国際協力のあり方」に関する国際シンポジウムを主催し,23カ国から外国人36名の参加も加えて,300名余が出席して,「歯科保健向上に寄与する国際協力のあり方」について,とくに開発途上国への国際連携のあり方に関して熱心な討論が行われた(写真1)。

 世界保健機構(WHO)パカモフ歯科保健主任,世界歯科医師会鶴巻克夫会長,米国国立歯科学研究所コーエン副所長などの口腔保健分野における世界的指導者と学生や一般市民を交えた幅広い出席者との間で,グローバルな視点から口腔保健を考える新しい学問分野の形成並びにその実践が,国際連携を重視する21世紀における大学の役割として重要であることが認識された。とくに日本をはじめとする先進諸国は,この分野の問題点を教育に反映し,かかる人材の育成につとめる必要性が強く指摘された。

 本シンポジウムには口腔保健の専門家に加えて,全国からかなりの数の学生の出席を得ることができたと同時に,本歯学部学生による様々な面でのボランティア活動による協力があったことは特筆に値するものと思われる。本シンポジウムの成功に向けて市民に対するPR活動やプログラムの作成,当日の受付やスライド係などに積極的に関わることで,学生たちにとっては,日頃の授業では味わえない社会貢献,国際貢献の意義を肌で実感する貴重な体験となった。彼等の生き生きとした姿を見て,課題を与えてその解決に自ら当たるという教育の流れの重要性を改めて認識させられる機会ともなった次第である。

写真2:和やかに,真剣に−歯学集団研修コース  本歯学部では,1988年以来国際協力事業団(JICA)から委託され,我が国唯一の「途上国歯科医師のための歯学集団研修コース」を実施し,すでに39カ国から140名を超える歯科研修生を受け入れている。この中にはアジア,アフリカ,ラテン・アメリカなど途上国を多く抱える地域はもちろんのこと,かつての東欧諸国からの参加もあり,今年度はコソボ問題の中心地の若い歯科医師も参加して研修に励んだ(写真2)。

 発足以来コースリーダーをつとめている中田 稔歯学部長が,今回のシンポジウムの代表者となって,「歯科保健向上に寄与する国際協力のあり方」に関する国際シンポジウムを開催したことで,歯科保健分野における国際連携に関して,九州大学歯学部が大きな役割を果たしていることを国内外に強く印象づける機会ともなった。

文責:長田恵美
(ながた えみ・歯学部助手)