旧樺太演習林を訪ねて

附属演習林研究部


演習林の現況とサハリン訪問の経緯

 

ブユクリ(旧保恵)にあった旧樺太演習林作業所

 九州大学農学部附属演習林は,森林フィールド科学ための大型実験実習施設を利活用した教育・研究 を行っている。平成12年度からは,大学院重点化に伴い,生物資源環境学府,森林生態圏管理学講座と して大学院教育を行う予定である。現在,本部と福岡演習林(482ha)を福岡県糟屋郡篠栗町に,早良実 習場(33ha)を福岡市西区生の松原に,宮崎演習林(2,917ha)を宮崎県椎葉村に,北海道演習林(3,715 ha)を北海道足寄町に有しており,文字どおり北から南までの多様な森林で教育・研究を行っている。教 職員は,教官14名,事務官・技官等32名で,合わせて46名の組織である。演習林全般については,「九 州大学演習林概要−1998年発行」を参照されたい。今年度は,北海道演習林創設50周年であり,総長, 事務局長,前農学部長をはじめ関係者の列席を得て,盛大に式典を催した。

 九州大学演習林は,1922年(大正11年)の糟屋演習林(現福岡演習林)の設置をもって創設としている。 しかし,実際の演習林の設置は,1912年(大正元年)の樺太演習林から始まり,続いて台湾,朝鮮の演習 林が設置されている。これらのいわゆる外地演習林については,国際的に国境問題,感情的問題など多 くの問題があるが,学術的には,森林の開発管理がどのような変遷をたどっていったかということは, 大学演習林としてきわめて興味ある問題である。

ポロナイスク(旧敷香)にあった旧樺太演習林事務所

 「旧樺太演習林」は,ロシア,サハリン島(旧樺太)の北緯50度以南を領有していた時代の演習林で あり,ここには東京大学,京都大学,北海道大学(それぞれ約2万ha)も演習林を有していた。そのこ ろの木材資源は,きわめて価値の高い資源であり,大学の経済基盤を支える一つの財産と位置付けられ ていた。その後,第2次世界大戦での日本の敗戦と同時に,「旧樺太演習林」はソ連邦の森林管理下に 置かれたわけであるが,ソ連の国内事情同様,杳(よう)としてその実態は不明であった。最近,ソ連 邦の崩壊とともに,ロシアへの旅行や調査などがかなり緩和されてきた。とはいえ,まだまだ調査の交 渉,ビザの取得などには多大の時間を要した。すでに3年前から定期的に森林調査を行っている北海道 大学演習林の十分なアドバイスを受けながらも,計画してから実現するまで,約1年半かかっている。

 訪問団は,演習林研究部小川教授(団長),飯田教授,井上助教授,薛助教授,事務部西村会計掛長, 通訳ゴルフンケリ・ミハイル(九大大学院法学研究科,修士課程1年)の6名である。訪問の相手先は, ロシア,サハリン州営林局(ゲナジ・チェクルダイエフ局長)である。