旧樺太演習林を訪ねて

附属演習林研究部


ロシア・サハリンの森林事情と印象

 

 初めてのロシア,それもサハリンという限られたところでの短い訪問ではあったが,「やはり, ソ連は崩壊したのだ」というのが実感だった。経済的にも社会的にも混乱してるという印象が強か った。林業では,国有林の森林林業の事業予算は減少し,1997年にはロシア林業法が制定され, 民間企業から賃貸料を取って伐採,植栽を行っている。

 ロシアの国有林管理システムは,大統領府直轄営林省,州の営林局,地区の営林署,担当区とな っている。しかし,州レベル,地区レベルで,管理予算,職員の給料などを独立採算的に運営する 部分もあり,署長自身も,国家公務員なのか民間人なのか分からなくなる面もあるらしい。製紙工 場も,経営不振からサハリンにあった7製紙工場は閉鎖が続き,現在では1工場のみが操業してい るにすぎない。

 サハリンの森林はほとんどが天然林で,まだまだ自然が残っており,人工林(主にカラマツ)は 3%程度と少ないようである。現在重要な問題は,林野火災が夏季に多発し,地球気候変動とも関 係する北方林が減少していることである。1998年には,火災件数が350件,焼失面積8万haと異常 な事態となっている。

 訪問先の営林局の局長,署長をはじめ林務官の方々は,森林管理の基本原理を十分に認識し,森 林を保全し,林業を活性化させ経済状態を良くすることに心血を注いでおられ,同じく森林を愛す る仲間として意気投合した。北方天然林は,ツンドラ地帯の気候環境保全の重要な要因であること が少しずつ分かりはじめている。経済混乱に巻き込まれて,乱伐,火災による焼失など,取り返し のつかない森林荒廃を来たさないように,北海道大学に続いて九州大学においても,日ロ共同の調 査研究交流が望まれるところである。

 最後に,今回の訪問でお世話になったロシアの方々に,

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