乗り物に関連する 空気の流れ

総合理工学研究科教授 松 尾 一 泰
総合理工学研究科教授 益 田 光 治
総合理工学研究科助教授青 木 俊 之
総合理工学研究科助教授宮 里 義 昭


◆ はじめに
 空気の流れは,飛行機などの広い空間を運動する物体まわり,ジェットエンジンをはじめとする各 種機械やガス配管系内部などにおいてどこにでも見ることができます。本研究室では,このような空 気の流れに関連する研究を基礎から応用まで行っています。今回はその中で乗り物に関連する研究テ ーマ取り上げ,そのいくつか紹介したいと思います。

 

◆ 衝撃波の特性に関する研究
反射衝撃波のレーザー干渉写真
 衝撃波は,音の伝播速度(地上で約1200km/h)より早い超音速で降下するスペースシャトルのまわり で空気の流れが超音速から亜音速に減速されるときに発生します。そのため,これら機体の設計にお いて流れの中に発生する衝撃波を予知し,その特性を知ることは極めて重要です。本研究室では,高 マッハ数ショックチューブを用い,超音速で伝播する衝撃波の反射や回折などの特性をパルスレーザ を光源とする光学観察などで実験的に解明するとともに,数値シミュレーションを行っています。

 

◆ 衝撃波を伴う超音速流れの研究
 現在計画中のスペースプレーンに用いられる予定のスクラム/ラムジェットエンジンの空気取り入 れ口において,流路内の空気の高速流れの中に発生する衝撃波の挙動が,エンジンの性能に重大な影 響を与えます。本研究室では,吹き出し式超音速風洞を用い,エンジン空気取り入れ口(インテーク) における衝撃波の挙動を実験的に調べるとともに,数値解析による理論解析も行っています。また, 超音速ディフューザ内に発生する衝撃波を制御し,ディフューザの性能向上と騒音低減をはかる方法 の開発をしています。

 

◆ 高速鉄道トンネルの
  波動現象に関する研究
 新幹線のような高速列車がトンネルに突入すると列車の前方に圧縮波が形成され,この圧縮波がト ンネル出口に達すると周囲に衝撃的な騒音が放出されます。この騒音の特性を解明するには,トンネ ル内を伝播する圧縮波の特性を知ることが重要です。
疑似衝撃波のカラーシュリーレン写真
本研究では,伝播する圧縮波の背後に発達する 流れや非定常境界層,出口から放出される衝撃的な騒音の特性を,レーザー差動干渉計や高感度圧力 計及び精密騒音計を用いて高精度に測定し,さらに流れ場の数値解析も利用して列車・トンネル系の 波動現象を解明しています。

 

◆ 高速走行時に発生する自動
  車の空力騒音に関する研究
 自動車は走行中,車体形状により空気の流れが定められるため,車体の各部位でさまざまな形態の 流れが生じ,その流れの特性によって種々の騒音が発生します。そのため,車体まわりの流れの特性 を明らかにし,発生する空力騒音の特性を明らかにすることが騒音低減において重要です。本研究で は,車体まわりの空気の流れを数値解析することによって,流れにより発生する空力騒音の特性を解 明し,騒音低減方法を開発しています。

 

◆ その他の研究
 上記以外に,研究室では空気の流れを測定する方法の開発研究として,「レーザー誘起蛍光法によ る超音速流れ場診断法の開発」「MHD発電プラズマのレーザー計測法の開発」「感圧塗料を用いた超 音速流れの面圧力測定に関する研究」などを行っています。

研究テーマは,自動車の空力騒音,高速鉄道の列車・トンネル系にお ける波動と騒音,
スクラムジェットエンジンのインテークなど低亜音速から極超音速の範囲にわたる。

文責:青木 俊之(あおき としゆき)
E-mail:aoki@ence.kyushu-u.ac.jp