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概要

九大広報Vol.100

▲CESS(共進化社会システム創成拠点)の各ユニットは、この建物の中で日々研究に取り組んでいます。伊都キャンパスが実証実験の場となる――共進化社会システム創成拠点は、文部科学省が推進するセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムの一環としてスタートしたということですが、このプロジェクトは9年間という長いスパンで行われるそうですね。まずは、プロジェクトの中で、それぞれのユニットの役割や研究内容についてお聞きしたいのですが。高野:プラットフォームユニットの最終目的は都市OS(P 12図を参照)の社会実装です。都市のいろいろな状態をセンサーを使ってセンシング ※1 し、蓄えられたデータを活用して都市の問題を解決するプラットフォーム作りを目指しています。センシングする対象は、ヒトやモノ、その移動になります。キャンパス型の実験として、伊都キャンパスのセンターゾーンにプチセンサーボックスを 14基立てて、学生さんの動きのデータを収集しています。――キャンパスのデータは、どのように活用されるのですか。高野:発想としてはキャンパスの問題を学生自身で解決するプラットフォーム作り、つまり都市OSのキャンパス版です。ビッグデータを集めてオープンデータ化してアプリで使えるようにする。例えば、「今バス停に行っても混んでいますよ」という情報をスマートフォンで学生さんに提示してあげるようなシステムです。だったら「図書館で1時間くらい勉強して帰れば混まずに済みますよ。今のおすすめはこの本です」というレコメンドするようなアプリを作りたいんです。ほかにも、食堂の混雑具合だとか、広大なキャンパス内の移動手段といった問題も解決できるアプリを目指しています。――部屋の中での実験もあるとお聞きしましたが。高野:屋内型のセンサーでビッグセンサーボックスというのがあります。リビングと2つのオフィスの3部屋があって、リビングやオフィスでの人間の動きをセンシングすると同時に、動きに伴う消費電力のデータも収集しています。さらに人間とロボットが共生するというコンセプトを基にした実験も行っています。例えば、介護を要する方が「お茶が飲みたい」と言うと、ロボットが部屋から命令を受け取って冷蔵庫にお茶を取りに行くという屋内型の実証実験です。――では、続いてエネルギーユニットの林先生のお話をお願いします。林:私は燃料電池の研究をしています。私自身がやってきたのは燃料電池の材料作りで、機会があり、このプロジェクトの申請段階から参加させていただいています。このプロジェクトのために、私の研究で何ができるのか、正直わからないところもあったのですが、モビリティ ※2 というキーワードを基に「どこでも使えるエネルギー」というイメージで、電池やエネルギーを供給していくことを考えました。実世界のエネルギー消費に関するデータを収集することで「こういうところでこういうエネルギーが必要になる」ということがわかると思います。そのような需要や要求に応えていくことが、都市OSの社会実装に結びつくと考えて、研究に取り組んでいます。――具体的には、燃料電池でどのような取組をされているのですか。林:まずは伊都キャンパスのエネルギーについて着目しています。今、伊都キャンパスでは燃料電池や太陽光発電、風力発電が系統電源に入っています。電力会社との契約基準は7100キロワットなのですが、実際に昨日の消費電力はそれを超える7380キロワットだったんですね。でも、燃料電池でおよそ180キロワット、太陽光発電でおよそ140キロワット、風力で60キロワットをまかなうことで、契約基準の99%で済んだという話があります。小さな規模の話ですが、このような実世界データが都市OSの実装には役立つと思います。――林先生の研究は燃料電池の材料作りではあるものの、この拠点でほかの先生方とコミュニケーションを図る中でエネルギーの役割が見えつつあるということですね。林:そうですね。さらにデータを蓄積していくことで、さらに先生方とお話させていただく機会が増えると思っています。高野:プラットフォームユニットでも、エネルギーマネジメントシステムを構築したいという目標がありますので、ユニット間でいろいろとお話をさせていただきたいと思っています。――では、情報デバイスユニットの中野谷先生、お願いします。中野谷:我々のユニットは、高野先生のお話にあったセンシングした情報をいかに取り出すかという研究だとも言えます。情報を得るためのインターフェイスの1つとして、有機エレクトロニクスの分野に力を入れて研究を進めています。いわば、非常にフレキシブルなマシンインターフェイスを作り出す研究です。液晶テレビとかスマートフォンのディスプレイのような硬いインターフェイスではなく、有機材料を使うことで下敷きや普通の紙のようなインターフェイスを作り出そうとしています。【聞き手】学術研究・産学官連携本部研究推進主幹(SURA)山内 恒(SURA:Senior University Research Administrator)※1  センシング   任意に設置したセンサーを活用して   対象となるものの動きや量を測定す   ること。※2  モビリティ   流動性、移動性。ここでは移動を支   える手段やその環境支援。研究推進職(URA:University ResearchAdministrator)とは研究開発に係る企画立案、資金の確保、知的財産の取得及び活用、その他研究開発に係る業務に従事する専門職。10 KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2015.10