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概要

九大広報Vol.100

H2H2H2H2エネルギーシステムオープンデータ センサーデータ 交通情報 エネルギー消費量自治体等 交通システム都市交通の最適化 エネルギーの最適化フィードバック市民サービスの最適化仮想都市モデル都市OS実世界Hるとは限らないということです。我々のユニットは社会科学の領域の研究を行っています。特にイノベーション研究・イノベーションに関わる政策研究を行っている人間が集まっています。「どんなにすばらしい技術を作っても普及するとは限らない」という問題は、比較的古くからイノベーション研究の領域で扱われている重要なテーマです。これら先行研究が教えてくれることは、燃料電池や燃料電池自動車、有機ELディスプレイがすばらしい技術であることは間違いありませんが、それらが普及するのかというのは別の次元の話であり、普及のためには技術開発とは別の戦略を考える必要があるということです。――実際に研究成果を普及させるためのユニットということですね。長谷川:燃料電池自動車を実際に普及させようとしたら、水素ステーションをあちらこちらに作る必要がありますよね。このように、どうやって普及させるかという視点を、実際に技術研究されている方々と議論することによって「もうちょっとこうした方がいいのでは」というような後方支援や実装支援をするのが我々の立場です。――とてもわかりやすいお話ですが、具体的にどのようなことをやられているのでしょうか。長谷川:バックキャスティングと呼ばれる手法があり、これを使うことを我々のユニットでは考えています。例えば2030年にはこういう世の中でありたいと考えるとします。そのためには、こういう技術を何年までに開発しておかないといけないよね、現在までさかのぼると、既存技術との間にはこれだけの開きがあるよねと言う風に、時間をさかのぼって考えるやり方です。それによって、研究開発の方向性を見出していくということですね。中野谷:そのとおりだと思います。研究だけをしていると思考が固まりがちなので、分野の違う先生方とディスカッションして、将来どのような社会を作ればいいのかというお話を聞きながら、まったく違う視点で考えていくことはとても大事だと思います。林:そうですよね。作る側としては、つい結果が出やすい方にいってしまうので、それが本当に社会の役に立つのかという不安は心のどこかにあるんですよ。それでも自分の都合のいいように解釈して進めてしまうことが多いので、外から冷静に見ていただけるのは重要だと思います。そういう意味でも、このプロジェクトに長谷川先生がいらっしゃるユニットが入っているのは、とても素敵でありがたいことだと思いますね。――異分野の融合によって10年後のビジョンに向けて研究を進めていくというのは、本当に大事なことなのですね。長谷川:イノベーションが技術によって実現したのか、あるいは需要によって実現したのかという研究は1970年代頃から行われています。そのような研究の視点 を「テ ク ノロ ジ ー・プッシュVS デマンド・プル」といいますが、数多くのプロジェクトを調べた研究結果では、技術によってイノベーションがなされた例は全体の3割程度で、7割は需要が引っ張った結果によると指摘されています。もちろん技術がイノベーションを生み出さない訳ではありませんが、いかに需要を理解するかはとても大事なのです。藤澤:都市OSについて一般の方の前でお話することが多いのですが、よく聞くのは「予測なんてできません」というネガティブな意見です。「『技術で未来はこうなる』というのは理系研究者の思い上がりであって、何が起こるのかはわからない。実際に災害が起きても『想定外』で済ませたじゃないか」と。そういう人たちはイノベーションという言葉も嫌いなんですよね。これまでの震災が背景創刊100号記念特集② Front Runner SpecialCESSプロジェクト概念図都市OS……実社会の様々なデータを基に分析・シミュレーションなどをコンピュータ上で行い、実社会の課題解決を効果的に行うもの。▲CESSでは都市や社会の課題を解決するために都市OSを構築し、都市問題の解析・対策立案を行います。この都市OSを活用して新しい交通システムやエネルギーシステムを創出し、またオープンな環境を提供することで新たなイノベーションが次々に生み出される社会を実現します。12 KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2015.10