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概要

九大広報Vol.100

にある日本では、否定的というか、予測を好まない方が一定割合いるのは事実です。その中で、集積したデータと技術で予測をしようとする都市OSの研究を推進して理解を得ていくのは、とても難しいことだと思いますね。長谷川:新幹線を使う人は目にすると思いますが、チケットの販売窓口って結構人が並んでいることが多いですよね。でも、ふと横を見ると誰も利用していない券売機があるんです。中野谷:券売機で適切なボタンを押す自信がないのかもしれませんね。あるいは窓口で「こういうお得な切符がありますよ」って言ってもらいたいのかもしれません。長谷川:急いでいるときには券売機を使うほうが早く切符が買えるし、次の新幹線に間に合うだろうし、色々と合理的だと思うのですが、窓口に並ぶ方を選んでしまう人のほうがはるかに多い。なぜ並ぶのか、どうやったら購買行動を変えられるのかなどということも加味しながら物事を考えていくのも、実装する上で重要な研究課題ではないかと思います。――プラットフォームや燃料電池、有機ELの研究が進む中で、長谷川先生の研究はどのようなタイミングでそれらと融合していくのでしょうか。長谷川:我々のユニットでは去年はエネルギーユニットの佐々木一成先生の研究領域である燃料電池自動車に関する大規模な質問票調査を行い、8000人規模のデータを収集しました。そのデータを基に燃料電池の普及条件に関する分析にこれから着手するところです。今年は有機デバイスのチームと一緒にブレーンストーミングを行う予定です。我々は個別技術の専門家ではないので、それぞれの技術課題については深くはわかりません。しかし、知らないからこそ、また、普段、社会を見ているからこそ、異なった視点、言い換えると好き勝手なことが言えると思います。セレンディピティという言葉は、もともと探していなかった何かを発見することを意味していますが、このセレンディピティを意図的に生み出すきっかけを作れればと思っています。ただし、役に立たないアイデアも相当出てきますが(笑)、ブレーンストーミングはそういうものだと思って、先生方には、話を聞いていただきたいですね。伊都キャンパス一斉避難計画も考え中――さて、お待たせしました。最後に藤澤先生の産業数学ユニットです。産業数学がどのように関わるか興味があるのですが。藤澤:産業数学ユニットは以前IMIユニットと呼ばれていて、2013年から始まっています。その当時、私はまだ九州大学にはいなかったのですが、都市OS構想が文部科学省に採択されたときに見せていただいて、情報系、有機EL、水素系という九州大学の強いところ、競争力に長けたところをうまく組み合わせて、1つのコンセプトにまとめたなと感心しておりました。都市OSの枠組みの中に数理モデルや計算の部分がなかったので、差し出がましくも自分が研究している部分を提案させていただいて参加に至ったという経緯があります。――具体的にはどのような関わり方ですか。藤澤:プラットフォームのヒト・モノのユニットでは移動手段である交通に関して、エネルギーユニットではエネルギー最適化に関して関わっています。例えば、先ほども伊都キャンパスの話がありましたが、移転が完了する3年後には2万人弱の学生が集まることになります。そのときの移動システムをどうするかという問題があります。昭和バスさんはいい意味でフレキシブルに対応してくださっていて、混んでくると臨時バスを出してくれるのですが、学生さんが九大学研都市駅に近づいた時点で「着くよ」ボタンをトントンと押すと、そのデータ数によって臨時バスが動き出すみたいなシステムも可能だと思います。――それは単純ですがおもしろいシステムですよね。藤澤:どれくらいの人がどこにいて、どれくらいの量があるかをきちんと計量化できれば、いいシステムができるということです。ヒト・モノ・動きのモデル化と計算による予測最適化というのは、昔から応用数学系の研究者が考えてきたことですが、計算機の処理能力が格段に向上していますし、数学モデルもしっかりしていますから、昔と今では数理モデル研究の雰囲気は大きく変わりましたね。――やはり伊都キャンパスが1つの実証の場になるということですね。藤澤:私たちの暮らしを取り巻く世界には相容れない問題が存在します。特に災害時の避難計画というのはとても大事な問題です。実は、伊都キャンパス一斉避難計画というのを考えていまして、予測と違う動きをするとか、情報と違う動きをするというのを含めて、数理モデルとして整理しているところです。ユニット間の協力は次の1年でさらに強固に――各ユニットの内容やつながりはわかりましたが、今後はさらに協力しあっていくことになるのでしょうね。藤澤:この拠点に関しては、科学技術イノベーション政策ユニットがあるということが高い評価につながっています。ぼくらは最新技術を組み合わせて、とにかくガンガン先に進みたいのですが、違った観点から意見していただいたり、フィードバックしていただけると安心して進んでいけますね。若い人のキャリアパスを重要視することがこのプロジェクトの発展にもつながる。KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2015.1013KYUSHU