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概要

九大広報Vol.100

 近年、大学において教育研究で利用・創出された機器や成果は、「教育研究文化財」として新たな価値が認められ、博物館ではキャンパス移転に際して本学百年の教育研究の歴史を物語る「証拠」として収集しています。その中でも、大学の創生期(大正中期から昭和初期頃)に購入された什器(全て木製)は、現在の国産木材では再現できない素晴らしいものです。しかし、これらは購入後100年近い年月が経過し、表面の劣化が進んでいるため、キャンパスの移転に伴い廃棄されることも多い中、博物館では約6年前から木製什器の救済・保存をしています。私が所属する農学部でも、3年前から部局の取組として、可能なかぎり修復利用しており、修復を担当する大川市(家具工業会)との社会連携事業に発展してきています。 このプロジェクトは、博物館的な取組ですが、同時に今世界中で大変関心を集めている大気中のCO2削減・固定に大きく貢献するものでもあります。本学に残っている大学創生期の木製什器には、樹齢200年以上の大木が大量に使われています。このような木材には大気中のCO2が大量に固定されています。しかし、廃棄・焼却すると木材10㎏あたり約17㎏のCO2が放出されます。このように、大学内の古い木製什器の救済・保存・一部再生利用が、大量のCO2排出の削減に貢献することに繋がるのです。 さらにこのプロジェクトの意義は、大学の古い木製什器が購入当時から備品台帳で管理されているため、購入年月日、同価格等に関する詳細な情報が明らかなことです。このことで、各什器の時代考証も可能であり、多くの木製什器を収集・分析することで色々なことが分かってきます。その一例をご紹介します。写真①は、大正15(1926)年から現在までの6つのレターケースを右から年代ごとに並べたものです。レター15(18㎜15MUSEUMREPORTvol.02 『什器』九州大学歴史的備品再生プロジェクト九州大学総合研究博物館の収蔵資料修復什器がある理事室(箱崎キャンパス)。机は昭和14(1939)年7月31日に購入大学創生期の備品台帳(昭和10年)じゅうきKYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2015.1025KYUSHU