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概要

九大広報Vol.100

10㎏17㎏15(ケースなので、試しにA4サイズの九大広報を入れてみると、写真②のように大正 15(1926)年と昭和38(1963)年以降のもののみ完全に収納できます。おそらくこれは、大正時代は英文用便箋がA4よりも縦が 18㎜短く、幅が6㎜広いレターサイズであったことと深い関係があったと思われます。その後、日本規格のBサイズが主流となり、平成2(1990)年にはA4サイズが公文書の正式サイズに決まりますが、それ以前の昭和35(1960)年頃からAサイズが普及していたのではと考えています。このように、購入年月日が明らかな大学の什器は市中のレトロ家具とは決定的に違うのです。 大学で長く使われてきた貴重な什器ですが、他の大学や一般の歴史的な建物でも同様なことがあると思い、全国各地・各施設で木製什器の保存状況調査を行いました。しかし、そのほとんどで建物に見合った歴史のある什器を見つけることはできませんでした。なぜ、本学だけにこのように大量に残っているのでしょうか。一般に古いものは研究室などの移動・変化時に廃棄されますが、本学ではその移動が次の3つの理由によって最小限であったためであると考えられます。第一に、箱崎キャンパスの主要な建物が昭和40年代までに建設されており、当時はまだ木製什器が主流であったこと、第二に少し前に行われた耐震補強が、本学では伊都キャンパスへの移転が進行中であることから、必要最小限度で行われたため研究室の移動がなかったこと、そして第三に多くの研究室の研究が継続的に行われ、そこで研究を行う人々が繋がっていることです。新しい教授に変わっても、先代の教授、つまり恩師が研究室に来室した際に、「教授机を使ってくれてありがとう」と言われたので、そのまま使い続けたという話をいくつかの研究室で耳にしました。現在、農学部創生期から教授陣が使ってきた机(写真③)が 15台も見つかっています。 これからも本学の歴史が詰まった貴重な什器を集めて、それらの利用を継続したいと考えています。一度、これらの什器に触れ、その素晴らしさとともに、本学の歴史と伝統を感じていただければ幸いです。〈総合研究博物館 館長 吉田 茂二郎〉修復した農学部創生期の教授用の執務机。大正10(1921)年3月5日に購入九州帝国大学理学部の刻印が押された机 九州帝大理学部のプレートが付けられた什器①レターケースの変遷(年号は購入年) ②A4サイズの九大広報を入れた様子写真① 写真③写真②現在 昭和38年 昭和30年 昭和14年 昭和8年 大正15年(1963) (1955) (1939) (1933) (1926)26 KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2015.10