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19Kyushu University Campus Magazine_2010.5こそ、あまり影響がない程度に簡略化、パラメタライズできないかと考えるわけです。何十年間にわたる長期的な計算をしたいので、あまり詳細なモデルを作ってソフトの動作が重たくなると、計算機リソースの問題でスピードも出なくなります。南里 私の専門分野が計算機なのですが、先生は、現在、どのような計算機を使っていますか。竹村 国立環境研究所のスーパーコンピュータと、九州大学の応用力学研究所の計算機を優先的に使わせてもらっています。自分の研究室にはLinuxの計算機があります。南里 スーパーコンピュータの方は、ベクトル型ですね。竹村 そうです。「SPRINTARS」はもともとベクトル型である「地球シミュレータ」用に最適化しています。南里 利用者の立場として計算機に何を期待されますか。竹村 基本的に気象の分野は、依然として計算機リソースが全然足りません。気候モデルを使って百年ぐらいの計算をする場合、水平方向では五○kmから一○○kmのスケールが精一杯。速度の面ではまだまだ高速化していただかないと、空間分解能の細かいモデルが動きません。エアロゾルから地球現象をトータルに捉える南里 パラメタライズする一方で、分解能の細かいモデルが必要なのですね。竹村 雲が生成されるプロセスは、少なくとも二、三kmくらいで分解しないと自然なモデリングができません。そのくらいのグリッドスケールでないと、きちんと物理的に気象現象を表現したとはいえないのです。エアロゾルの影響は二酸化炭素に対して、定量的にこのくらいですよということも大事ですが、私自身としては、大気だけではなく、エアロゾルの発生・輸送が海、氷河、氷床、陸面、植生、砂漠などとどのように相互作用しているか、トータルに地球現象を捉えていくことに科学的興味の眼目を置いています。エアロゾルでさえ、同一の方法や原理では研究できないのに、またさらに研究が複雑になってくる可能性はあるので、計算機リソースの進化にはぜひとも期待したいですね。南里 この分野に興味を持ったきっかけは何ですか。竹村 小学校の四、五年生で習う星空の観測で、天文に興味を持ちました。大学でも天文を学ぼうと入学したのですが、天文自体は非常にセグメントされた分野だったので、宇宙物理、地球物理全般にも関心を広げてみようと考え、その中で気象の分野、大気の放射エネルギーだとか、エアロゾル、雲の研究に出会いました。大学四年生の頃です。大学院もその方向で進みました。小学校の時から興味は「空」を向いていたということですね。南里 しかし、学部四年で自身の進む道を決められたのは早いですね。竹村 早めに方向が見定められたのはよかったと思います。もう少し遅かったら、違った人生になっていたかもしれません。南里 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)にも参加されています。いつからですか。竹村 間接的なものも含めると九九年からです。東京大学の大学院修士課程に在学中で、博士課程に進もうかという頃です。エアロゾルが重要だということになって、声掛けがありました。第三次評価報告書から間接的に関わって、○七年に出版された第四次評価報告書では執筆協力者として参加しています。一三年から一四年にかけて、第五次評価報告書の出版が決定していますが、次はチャプターを主導して執筆するリードオーサー候補に挙がっているという連絡がありました。南里 国や学会から推薦されるのですか。竹村 基本的にはそうです。国としても世界を主導するような研究者を輩出したいところなので、文部科学SPRINTARSにより計算された人為起源エアロゾルの直接効果放射強制力(大気放射エネルギー収支の変化)聞き手の南里准教授

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