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20Kyushu University Campus Magazine_2010.5省や環境省も少なからず力を入れていると思います。南里 IPCCには日本からは何人くらいの研究者が参加しているのですか。竹村 第一から第三の作業部会があって、第四次評価報告書の第一作業部会では、日本人研究者は三○人弱。九州地区では私だけでした。先進国の中ではまだ少ないように思います。南里 第四次評価報告書に誤りがあったとして、一時、地球温暖化懐疑論もかまびすしかったですね。竹村 日本ではマスコミが結構大々的に取り上げたため、懐疑論を唱えている日本人は比較的多いのですね。しかし、報告書はIPCCの独自研究ではなく、査読論文を取りまとめて作成されます。査読論文の中に温暖化に対する懐疑論的な論文は、皆無に等しいです。評価も定量的にかなりの精度を持ってきて、第四次評価報告書では九○%以上の確率で今の温暖化は人間が引き起こしていると結論付けています。ここまで来ると、誰もが納得するような研究結果を持ってこないと反論は難しいし、懐疑論はおそらく下火になってくると思います。温暖化は、何十年スケールの話なので、体感できないのがネックですね。一年前の今日、自分が何をしていたか思い出せないのと同じです。しかし、物を燃やすと二酸化炭素だけでなく、煤や硫黄分といったエアロゾルが出ますから、それが大気汚染を引き起こすということは目で見てわかりますよね。また、化石燃料は必ず枯渇しますから、省エネルギーで残りかす(エアロゾル)を出さないような生活スタイルにしましょう、すると空気もきれいになりますよと提案すると、イメージが湧いてくると思うんですね。個人的な考えですが、最終的には太陽のエネルギーが一番いいと思います。人間が生存している限りは太陽は必ずありますから。太陽エネルギーの安定供給も近い将来技術的にクリアできるのではないでしょうか。専門性だけではなく広範な 知識、交流が求められている南里 化石燃料を燃やすことは経済活動に直結しています。気候に関しては社会経済学的な領域とも連携が必要ですね。竹村 気候変動研究に関しては、研究室や大学を超えて日本全体の研究者で盛り立てていかねば成果は出ないと思います。また、環境の分野は今、人材が求められていますから、社会に出てどのコースを歩むにしても対応できるよう、学部、修士や博士課程も含めて学生には広い視野を持って勉強や研究を進めてほしいと思っています。南里 視野を広くする秘訣はありますか。竹村 母校の東大の研究所には畳の部屋があって、違う研究室の学生と話をすることが多かったのですが、その知識が今も役立っていると感じます。研究室の中だけ、同じ分野の人だけの繋がりで、その分野では専門家になれるかもしれませんが、バランスの取れた考え方を持って社会に貢献するという機会は得られない気がします。まずは学生同士、積極的にいろいろな人と交流してほしいですね。あともう一つはバランスの取れた生活をすること。私は中学から大学まで真面目に陸上競技をやりました。また、研究とは関係のない小説やミステリーもよく読むのですが、想像力が刺激されますね。自分の好きなことをする時間も研究と同じくらい大切だと思いますね。Profile竹村 俊彦竹村 俊彦 准教授 プロフィール1997年3月 東北大学理学部宇宙地球物理学科 卒業 1999年3月 東京大学大学院理学系研究科地球惑星物理学専攻 修士課程修了 2001年4月−2001年9月 日本学術振興会特別研究員 2001年9月 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻 博士課程修了(博士(理学)) 2001年10月 九州大学応用力学研究所 助手 2004年10月−2005年10月 NASA Goddard Space Flight Center(アメリカ航空宇宙局ゴダード宇宙飛行センター) 客員研究員 2006年2月 九州大学応用力学研究所 助教授2007年4月 同准教授 現在に至る

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