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21Kyushu University Campus Magazine_2010.5file01新しき挑戦者たち工学府 物質プロセス工学専攻生物機能材料工学研究室博士後期課程3年女性視点が、私のオリジナリティ。九州大学で学び、目指す分野を究めようとする次世代のプロフェッショナルを紹介します。今回は、2009年度「ロレアル―ユネスコ女性科学者日本奨励賞」を受賞し、今後の活躍が期待されている女性科学者の登場です。大串 裕子さん研究歴わずか三年で、権威ある賞を受賞 将来性のある女性科学者を支援する目的で設立された「ロレアル―ユネスコ女性科学者日本奨励賞」。2009年度は全国で4人の女性科学者に贈られ、その一人に九州大学の大串裕子さんが選ばれました。 大串さんは、細胞からの組織の再生をサポートするバイオマテリアルをつくる研究をされています。具体的には、細胞だけ移植しても大きな脂肪組織の再生は難しいという課題に対して、ハイドロゲルというゼリー状のものを細胞と合わせて移植することで、より大きな脂肪組織を構築し、乳房の再建を目指そうとするものです。 「受賞の知らせを聞いた時は、信じられなかった」と語る大串さん。 研究歴わずか3年での受賞は、快挙と言っても過言ではありません。きっかけは高校時代に見た“水に浮くコンクリート” 大串さんが、物質科学の分野に興味を持ったのは高校3年生の時。ある大学で見た”水に浮くコンクリート“がきっかけでした。 「コンクリートは重いものと思っていたのに、そのコンクリートは発泡スチロールのように軽かった。当時の私にはとても衝撃的なことでした」 その後、九州大学の物質科学工学科へ進学。女性科学者としての道を歩みはじめます。工学的立場から取り組む再生医療の研究。 大串さんの研究は、工学分野のみならず生命科学分野など、複数の分野にまたがっています。 「医学部や農学部ではなく、工学部でバイオの研究ができるというのが私には新鮮でした。それで、ぜひ、工学部で再生医療の研究をやってみたいと思ったんです」 研究を進めるためには、細胞や体のしくみなど、改めて修得しなければならない知識も多いとのこと。 「でも、ものをつくるという工学的視点は見失わないよう意識しています」 そう語る大串さんからは、ケミカルエンジニアとしての強い意志が垣間見られました。女性であること。それをオリジナリティに。 現在、工学部での女性研究者の割合は全体の1割程度。「だからこそ、女性の視点を大切にしたい」と大串さんは言います。 「男性が気づきにくいことや取り組みにくい課題を研究し、女性特有の悩みの解決につながる研究ができればと。それが自分のオリジナリティにもなると思いました」 そして取り組んだのが乳房の再建。「乳ガンで、乳房をとることになっても命までとられるわけではありません。けれど、やはり、人生の楽しみは減ってしまう。私の研究でそれを少しでも高めることができればと思っています」これから、女性科学者の活躍の場も広がるはず。 大串さんのご両親は共働きで、ずっとYuko OGUSHI

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