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26Kyushu University Campus Magazine_2010.5TOPICS―トピックス ❷ 大学院法学府国際プログラム主催(共催・北海道大学大学院法学研究科グローバルCOEプログラム「多元分散型統御を目指す新世代法政策学」)の国際シンポジウム「現代知的財産法における新しい空間、新しいアクター及び制度論的転回」が、平成22年2月13日、14日に開催されました。 法学府は、1994年から授業・論文執筆の全てを英語で行う法学修士課程(LL.M.)を日本で初めてスタートさせ、1999年からは同様の法学博士過程(LL.D.)を開設しました。研究者は優れた論文を執筆するにとどまらず、国際的な研究水準を把握し、その場で自己を的確に表現せねばなりません。国際シンポジウム(本年で第5回目)では、自己の研究に合致し、かつ前述の研究者としての能力を涵養するべく、LL.D.学生がシンポジウムのテーマ設定と講演者の選定に積極的に関わり、学生自身も報告を行います。成果はアメリカのローレビューやヨーロッパの出版社からの単行本という形で公表してきました。 今回のシンポジウムでは、「制度論」を学問的方法論に据え、デジタル著作権、医薬特許、知的財産法の国際私法的側面という三つの研究テーマを横断的に分析し、今後の知的財産法のあるべき姿を模索したいと考えました。単純に三つのテーマを並べるだけでは教育研究効果に乏しく、三つのテーマという「縦櫛」を、制度論という方法論的な「横櫛」で刺すことにより、はじめて多角的な視座に基づく考察が展開できるという判断からです。 コンセプト作りは、学生と担当教員の長時間の議論に及びましたが、シンポジウムを単なる「打ち上げ花火」でなく、真に実り多くするためには決定的に重要なプロセスです。少しでも高水準の内容を目指したいという学生たちと議論を重ねることができ、私にとっても大変充実した時間でした。 シンポジウムには世界第一線の研究者が集い、ハイレベルの報告と質疑応答が展開されました。議論を通じ、グローバルな市場、デジタル環境及び新技術の出現が「新しい空間」を生み出していること、情報財の権利者、利用者、媒介者、発展途上国、非政府組織等の様々な「新しいアクター」が知的財産法の政策形成過程や法形成過程において無視できない存在となりつつあること、これらの状況変化が知的財産法の関係当事者の利害調整のあり方に大きな影響を与えつつあることが確認されました。 参加者からは、シンポジウムのテーマの一貫性と高水準の議論を評価する声が多数寄せられました。シンポジウムを一過性のものとせず、参加者全員にとって学術的にハイレベルな機会とし、学生たちにも学問の広がりや深みを体得してもらいたいという、「二兎以上を追う」欲張りな試みは、結果的に所期の目的を十二分に達成したといえます。 LL.D.学生と担当教員は、既に来年2月の国際シンポジウム開催に向けて動き出しています。2011年は、「集合行為(collective action)」を統一テーマに設定し、現在、準備作業を進めています。 (文責:法学研究院准教授 小島 立)LL.D.学生が主導し、新しく、ハイレベルな国際シンポジウムを開催LL.D.シンポジウム―●大学院法学府国際プログラム主催シンポジウム紙幅の都合もあり、本稿で触れられなかった内容も多くあります。シンポジウムの詳細については、http://www.law.kyushu-u.ac.jp/programsinenglish/conference2010http://www.businesslaw.jp/blj-online/interview/000135.htmlを併せて参照していただければ幸いです。

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