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18Kyushu University Campus Magazine_2010.7安達 千波矢浜瀬 有機物質を使うメリットが何かあるんでしょうか。安達 ディスプレイで言えば、今は液晶もとても薄くなっていますが、基本的に蛍光灯が入っています。蛍光灯の前にRGBのシャッターがあって、それを開けたり閉めたりして画像を作っているのです。有機ELは、青、緑、赤に光る物質を並べて、そこに電気を流すと有機物の分子そのものが光って画像を作ります。つまり光源がいらない。だから、より薄さも追求できるんです。将来は紙のように薄っぺらなディスプレイが使われる時代が来ると思いますよ。マイナス電流が流れる 有機材料を探し続ける上野 先生は、いつ頃からこのテーマを研究されているのですか。安達 修士一年生から研究しています。でも、当時は有機ELをやっている人は、世界に3人くらいしかいなかったんですよ。最初は、不安もありましたが、研究しているうちにおもしろいなと思って、いつの間にか夢中になっていました。上野 当時は、どのような研究をされていたのですか。安達 電流にはプラスとマイナスがありますが、私が研究をはじめた頃、有機物質には、ほとんどプラスの電流しか流れていませんでした。それを四年生の時に知って、疑問に思ったんです。物理系の人間なんで、プラスとマイナスの電流が流れれば、いろんな電子デバイスができることは直感的に理解できていたので。有機ELもマイナスの電流を流す物質がないとよく光らないことがわかっていたので、とにかくマイナスが流れる物質を見つけようと思いました。それから、ひたすら実験です。私は、修士一年の時の論文発表は全くないんです。二年生でもほとんどなくて、後半にやっと一件、学会で発表したくらいです。他の人は、半年に一回とか学会に発表して華やかにやっていましたけどね。浜瀬 まわりがどんどん学会に発表していくなかで、二年生の後半まで発表がないというのはつらくなかったですか。安達 つらくはなかったですね。研究室で自分がいちばん実験をしていたという自信がありましたから。二年生の後半で、やっと、マイナスの電流が流れる物質を見つけたのですが、パーッと光って「コレだ!」と思った瞬間、ゾクッとして鳥肌が立つ思いでした。思わずガッツポーズしてました。ディスカッションから新発想、欧米式の研究方法を修得上野 ところで、先生は、アメリカでも研究されていたんですよね。安達 ええ、プリンストン大学のフォレスト教授に誘っていただいて。でも、大変な毎日でした。休みはないし、教授は2時間おきにラボにまわってきて、「What's new?(何かおもしろいことは起きたか)」と聞くんですよ。「2時間で成果が出るわけないだろう」って思ってましたね(笑)。ミーティングは、毎朝7時から。喧嘩しているんじゃないかと思うくらいとことんディスカッションするんです。私が教授に結果のデータを見せると、いきなり否定して議論をふっかけてくる。悔しいので反論しますが、教授があまりにしつこく言うので「彼がこれだけ言うのだから僕が違うのかな」とちょっと違う発想をするんです。そうすると、パッと新しい発想が浮かぶこともありました。彼らは、ディベートで議論して新しいものを生んでいたんです。一方、実験は私から見ると本当にミニマム有機光エレクトロ二クスによるイノベーション

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